"生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの" 第13話
積もる話と透けて見える本音
やがて、美しく盛り付けられた料理が次々とテーブルへ運ばれてきました。
鮮やかなオマール老のテリーヌ。 ばしく焼きげられた真鯛のポワレ。 トリュフソースが惜しげもなくかけられた、分い牛フィレ肉。
母はフォークとナイフを器用に使い、になって料理をに運びました。
「美しいわぁ……お肉がのでとろけるようね。 ねえ美咲、べてみる? 本当に美しいわよ」
「いえ、結構です。お母さんが全部召しがってください」
私がたいにをつけると、母は満そうにナプキンで元を拭い、グラスのワインをみ干しました。 お酒が回ってきたのか、母の頬は赤く染まり、饒舌に昔話を始めました。
「美咲がさい頃は、本当によくがかかったのよ。 夜泣きがひどくて、私が晩抱っこして部を歩き回ったこともあったわ。 運会のお弁当には、美咲の好きなタコさんウインナーをたくさん詰めてあげたでしょう? をした夜に、のをって児科へ連れてったこともあったわね」
母のから語られるのは、自分がどれほど献な母親であったかという、美化された記憶ばかりでした。 確かに、そんなもあったのかもしれません。 けれど、その記憶のすべては、あのたいの朝に、母自のによって々に踏みにじられたはずでした。
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母は私の元に目をやり、探るような線を投げかけてきました。
「美咲も派な会社に勤めて、お料もいいんでしょう? お父さんはで暮らしてるって言ってたけど、だけで活できてるの? まさか、実のあの古いを売ったりしてないでしょうね?」
質問をねる母の言葉の端々に、隠しきれない図が滲みていました。 このは、ぶりに娘に会いに来たのではない。 娘と元夫の現の経済状況を品定めし、再びを引きせる余力があるかどうかを嗅ぎ回りに来たのだと。
「お父さんは、自分ので質素に、でも幸せに暮らしていますよ」 私がく答えると、母はし興ざめしたようにグラスを揺らしました。
「ふうん……相変わらず領の悪いね。もっと器用にきればいいのに」
自分の元夫に対する、侮蔑の混じった台。 この期に及んでも、父に対する謝や罪悪は、微も持ちわせていないようでした。
「まあいいわ。今は本当にごちそうさま。 昔はこんな贅沢、のまただったものね。になった娘にごちそうしてもらえるなんて、私も母親冥利に尽きるわ」
母はデザートのチョコレートスフレを最のまで平らげ、満そうにふうと息を吐きました。 空になった皿がげられ、のエスプレッソが運ばれてきます。
そして、黒い革のトレイに乗せられた伝票が、静かにテーブルの端へと置かれました。
母は伝票を指先で引き寄せ、チラリと計額を盗み見ました。 料理と級ワインをわせて、万千円を超える額でした。
「結構なお値段ね」 母はそう言ってクスッと笑うと、伝票を私の目のへとスーッと滑らせてきました。
そして、バッグから財布をす気配すら見せず、当然のような顔をして言ったのです。
「美咲、ごちそうさま。美しかったわ」