みかん小説
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"生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの" 第2話

たいと置きりの言葉

「……お母さん」

廊のにっていた私のから、絞りすような声が漏れました。

「それ……お父さんのおじゃないの?」

母の華奢な背が、ピタリと止まりました。 振り返った母の顔から、先ほどの作り笑いは完全に消えっていました。

「……今はこれが必なの。あとでちゃんと返すから」

母の言い訳は、ひどくでした。 まるで自分自に言い聞かせているかのようでした。

「お母さん、どこにくの? いつ帰ってくるの?」

私はすがりつくように問いかけました。 が胸を埋め尽くし、元がたく震えていました。

「何度も同じことを聞かないで!」

ピシャリと、たい声が返ってきました。 母にそんない調で鳴られたのは、まれて初めてのことでした。 私は息を呑み、それ以言葉を続けることができなくなりました。

母はたい旅鞄を両で持ちげ、玄関の(たたき)へとりました。 ガチャリと属の鍵をけ、ドアを押しけます。

の初めの、肌を刺すようなたい気が、狭い玄関に気に流れ込んできました。 の青い朝ののにつ母は、もう私の目を見ようともしませんでした。

「お父さんにはね……しばらく帰らないって、そう伝えておいて」

それだけを言い残すと、母は度も振り返ることなくへ踏みしました。

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バタンッ。

い鉄の扉が閉まる鈍い音が、静まり返ったのにきく響き渡りました。 郵便受けの隙から、母の履くヒールの音がコツコツとざかっていきます。 やがて、その音も完全に途絶え、が痛くなるような静寂だけが残されました。

私はパジャマ姿のまま、え切った廊にち尽くしていました。

(すぐ帰るって言ってたもん) (夕ご飯のときには、きっと帰ってくるはずだよね)

そう自分に言い聞かせながら、私は居の引きしを見つめました。 半きになった引きしの底は、茶い目がむきしになっていました。 父が毎切に入れていた封筒は、通たりとも残っていませんでした。

計の針がむ音だけが、カチリ、カチリと部に響いていました。 お昼を過ぎても、夕方になって部が夕焼けに染まっても、玄関のドアベルが鳴ることはありませんでした。

がすっかり暗くなり、夜のを回った頃。 ガチャリと鍵がき、作業着姿の父が帰ってきました。

「ただいま。……美咲、どうしたんだ? 気もつけないで」

父は作業着の着を脱ぎながら、居にいた私に優しく声をかけてくれました。 そして、靴を揃えて部を見回しました。

「母さんは……まだ買い物か?」

私は何も答えることができませんでした。 喉の奥がきゅうきゅうと締め付けられ、声をせば何かが崩れてしまいそうだったのです。

父は私の異様な様子に気づき、ゆっくりと居の真んへ歩み寄ってきました。 そして、半きになったままのテレビ台の引きしに、ふと目を落としたのです。

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