"義母の老人ホーム代120万円を勝手に約束した夫" 第4話
万円の自送と消えた夫の半分
蔵庫、エアコン、そして旅。
突発な費がなり、私の貯残の減り方に危を覚え始めていた頃、翔太が夕の席で、さらに踏み込んだ提案を持ちしてきた。
結婚して目の、初の夜のことだった。
「結、ちょっと真面目な相談があるんだ」
翔太は珍しく缶ビールを置き、神妙な面持ちで私のに座り直した。
「母さんの、親父の遺族とわせてもに万円くらいしかないんだよ。団の賃が万千円引かれて、費を払ったら、費すら切り詰めなきゃいけない状態でさ。……毎、しでいいから活費を援助してやれないかな」
「毎の援助……?」
度きりのの買い替えとはわけが違う。毎固定でていくおは、計に永続な負担としてのしかかってくる。
「いくらくらいを考えてるの?」
「、万円」
翔太はさらりとにした。
「万あれば、母さんもカツカツの活から抜けせるし、しは美しいものもべられるだろ」
万円のに万円をせば、万円。団で暮らしをする齢者の活費としては、分に余裕がある額だ。
私はし考え込み、夫の目を真っ直ぐに見つめて条件をした。
「いいわ。お義母さんが本当に活に困っているなら、助けてあげたい。
広告
でも、つだけ約束して。万円のうち、半分は翔太がしてね。お義母さんは、翔太の実のお母さんなんだから」
「当たりだろ!」
翔太は迷うことなく、力く頷いた。
「俺の母親なんだから、俺がすのは当然だよ。万千円ずつ、折半でいこう。ありがとうな、結。母さんのこと、そこまで親に考えてくれて」
夫のその真っ直ぐな言葉に、私はから堵した。
これまでの費はすべて私の相撲だったけれど、毎の仕送りというな局面で、夫婦で痛みを分かちえるのなら、まだこの結婚活はやっていける。そう信じたのだ。
週けの昼休み、私は会社くの都へを運び、援助専用の普通預座をたに設した。
表が鮮やかな、真しい緑の通帳。名義は『宮部結』。
ルールは確だった。
毎の料に、私が自分の座から万千円をこの座へ移す。翔太も自分の座から万千円を振り込む。そして毎、計万円が、この座から義母・幸子さんの座へ自送されるという仕組みだ。
定額自送の続きを終え、私は緑の通帳をバッグの内ポケットへ切にしまい込んだ。
「夫婦で協力して、親を支えていく」
その形ができたことが、どこか誇らしくすらあった。
最初の送がわれた、幸子さんは作りの里芋と鶏肉の煮物をきなタッパーに詰めて、わざわざがまで届けに来てくれた。
広告
「結ちゃん、本当にありがとうねぇ。毎なんて、申し訳ないわ」
「いいえ、お母さん。で無理のない範囲でしっていますから」
私がそう微笑むと、幸子さんは翔太の顔を見て目を細めた。
「翔太は本当にいいお嫁さんをもらったわね。私、果報者だわ」
甘辛く煮付けられた里芋をで囲みながら、私は「これで良かったんだ」と温かい気持ちに浸っていた。困ったに助けうのが族だ。最初の数ヶは、確かにそうえていたのだ。
しかし、その平穏なは、わずかヶで脆くも崩れることになる。
最初のの送、私は約束通り万千円を入した。けれど、のになっても、翔太の座から万千円が振り込まれる気配はなかった。
残がりなければ、自送がストップして義母に恥をかかせてしまう。焦った私は、自分の個座から分の万千円をて替え、全額万円を用てて送を実させた。
夜、帰宅した翔太に尋ねると、彼はをポリポリと掻きながら言い訳を並べた。
「あ、ごめん! 今、営業の経費のて替えがくて座のおがカツカツだったんだよ。来、ヶ分まとめて万入れるからさ!」
「分かったわ。忘れないように、座番号をメモして財布に入れておくね」
私は付箋に名と座番号をき、翔太のつ折り財布のカードポケットにしっかりと貼り付けた。
けれど、翌も、翔太のおが円も振り込まれることはなかった。
「悪い! 今、同期の結婚式のご祝儀がなっちゃってさ……来こそ絶対に入れるから!」
。
「末は忘会の付きいがいだろ? がけたらボーナスからまとめてドカンと入れるよ!」
度目の言い訳を聞いた、私ので何かがたく沈んでいくのをじた。
催促すれば、翔太は骨に嫌になり、ため息をついてリビングをていく。庭内の空気を険悪にするのが嫌で、結局、私が毎のに、自分の与座から満額の万円を緑の座へ移すようになっていた。
がけても、が来ても、翔太の座からおが振り込まれることは度たりともなかった。
そして翔太自も、いつのにか「半分す」という約束そのものを、綺麗さっぱり忘れったかのようににしなくなった。
緑の通帳をくと、毎決まった付に、同じが械に印字されていく。
『与振込ヨリ 70,000』 『ジドウソウキン ミヤベサチコ 70,000』
差引残は、常にゼロ。
そこに、夫である翔太の名が刻まれることは、ただの度もなかった。