"看護師を捨てた元彼、10年後に妹の名刺を踏みつけた" 第5話
テレビの向こうの社令嬢
志がてってから、どれほどのが経ったのか分かりませんでした。
玄関のたいタタキのに座り込んだまま、私はくことができませんでした。 ふたりで選んだはずのカーテン、ふたりで座っていたさなローテーブル。 彼が持ちった荷物の跡だけが、ぽっかりと自然な空となって部に残されていました。
(どうして……? 私、何か違ったことしたのかな……)
膝を抱え、涙すら枯れ果てるまで震え続けました。 がすっかり暗くなり、灯のが部の窓を青く照らし始めた頃、私は何かにすがるように、ふらふらとちがってテレビのリモコンをつけました。
真っ暗な部に、液晶画面のまぶしいが広がります。 流れてきたのは、平の夜に放送されている全国ネットのニュース報番組でした。
画面を見た瞬、私の呼吸が喉の奥で止まりました。
『特集・現役学が巻き起こすIT革命! 次世代の若き起業に密着!』
軽なテロップとともに画面の央に映しされていたのは、仕ての良さそうな級スーツにを包み、堂々とインタビューに答える志の姿だったのです。
『事業をちげて軌に乗せるまで、本当に苦しい期もありました。 ですが、社員のみんなと……何より、僕の起業への挑戦と精神を番くで支えてくれた彼女のおかげです』
カメラが横にパンすると、そこには華やかなワンピースを着た、品で美しい女性が寄り添っていました。
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画面のテロップには、誰もがる証部企業の名と、その創業者の娘である「社令嬢」の文字が躍っていました。
『実は先、彼女にプロポーズをしまして、婚約させていただきました』
志が胸を張ってそう告げると、スタジオから「おめでとうございます!」ときな拍が沸き起こりました。 隣の令嬢が、カメラに向かって眩いダイヤモンドの婚約指輪を照れくさそうに見せつけています。
「……うそ……でしょ……?」
私の唇から、かすれた声が漏れました。
精神を支えてくれた彼女? 苦しい期を支えた? すべて、嘘でした。
志が起業サークルで遊んでいたこの、彼に飯をわせ、賃を払い、の回りの世話をすべて焼き、資を面し続けてきたのは、でもない私でした。 私には「おがないから」と百円ショップのヘアピンすら買ってくれなかった男が、成功した途端に私を捨て、企業の社令嬢に何百万円もの指輪を贈って婚約していたのです。
(全部……最初から仕組まれていたんだ)
志にとって、私は事業が当たるまでの「無料のホテル」であり「都のいい政婦」に過ぎなかった。 とコネを持つ社令嬢との結婚が決まったから、用済みになった私をゴミのように捨てたのだ。
テレビの向こうで、志はカメラに向かって勝ち誇ったような笑みを浮かべていました。
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その醜い笑顔を見た瞬――。 私の胸のに残っていた彼への未練やしみは、跡形もなく吹きびました。
代わりに湧きがってきたのは、胃の底が焼き切れるような、絶対な嫌悪と憎悪でした。
私は翌、事実を告発しようといくつかの週刊誌やメディアに連絡を入れました。 けれど、返ってきたのはたい言葉ばかりでした。
「お気持ちは分かりますが、同棲していた証拠や借用はありますか? アパートの名義もあなた自ですし、プロポーズの約束を公に交わしたわけでもないですよね。 ただの痴話喧嘩として片付けられてしまいますよ」
志は、自分の私物やふたりで撮った写真データをすべて持ちっていました。 狡猾な彼に、私は完璧に証拠を隠滅されていたのです。
泣き寝入りするしかなかったあのの絶望。 それからが経ち――今、目のにつ志が、再び私を見して笑っているのです。
「おいヒナ、聞いてんのかよ? おみたいな負け犬ババア、見てるだけで虫唾がるんだわw」
志が私の顔のに指を突きつけた、まさにそのでした。
「……ずいぶんな言いですね」
背から、氷のようにたく研ぎ澄まされた声が、フードコートの空気をピシリと切り裂いたのです。