"誕生日に姪を選んだ夫、3年後の再会で絶句" 第3話
崩れゆく境界線と忍び寄る罠
そのの夕、私は終始、胸の奥にざらりとした居の悪さをじ続けていた。
「ここ、座ってね」と私が案内したはずの席を無し、百は台所から戻ってきた私の目ので、当然のように尾のすぐ隣の子に陣取っていた。
のニットから覗くデコルテをこれ見よがしに調し、を乗りしては尾のの腕に自分の体をすり寄せる。
「尾さんって企業のエリートなんですよね? すごいなー! 私の周りの若い男なんて、でバカばっかりで全然頼りにならなくて。の男のって、本当に落ち着いてて素敵です!」
「あ、いや……俺なんて、ただの社畜だよ」
尾は戸惑いながらも、若い美女から真正面から褒めそやされ、らかにのを伸ばしていた。
見かねた私が「百ちゃん、お嫁入りの女の子が、あんまり既婚の男のにベタベタ触るものじゃないよ」としめの調で窘めると、百は形の良い唇をツンと尖らせてみせた。
「えー? お嫁入りって、陽菜ちゃん考え方が昭すぎ! 結婚式では全然ゆっくりお話しできなかったし、親戚なんだから仲良くしたいだけなのに。……尾さんは、私とお話しするの嫌ですか?」
潤んだ瞳で見つめられた尾は、慌ててを横に振った。
「そ、そんなことないよ! 嫌なわけないじゃないか!」
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デレデレとした夫のけない声に、私の背筋をたい悪寒が駆け抜けた。
そのを何とか切り抜けさせるため、「あ、尾さん、さっきスマホに会社から着信があったみたいよ。向こうの部で確認してきたら?」と嘘を言って夫を席からさせた。尾が逃げるようにリビングをていくと、百はつまらなそうに頬杖をつき、べ終えたお皿をシンクへ運んできた。
そして、蛇から流れるの音に紛れさせるように、私の元で囁いたのだ。
「……初めて会ったからってたけどさ。陽菜ちゃん、マジで掘りし物のいい男捕まえたよね。正直、私の歴代の彼氏の誰よりも顔がいいし、収入もあるし。……すっごい羨ましい」
その瞳の奥にあったのは、親戚としての好などではなく、の持っている質なオモチャを欲しがる子供のような、剥きしの奪欲だった。
百は学の頃から男が途切れたことがなく、私のっている限りでも桁を超える数の男性と付きっては別れを繰り返していた。周囲の男を自分の美貌でのままに操ることに、異常な執着を持つ子だった。
胸騒ぎを覚えながらも、「まさか、いくらなんでも既婚者である叔母の夫にをすはずがない」と、私は自分に言い聞かせていた。
しかし、私のその甘い見通しは、最悪の形で裏切られることになる。
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そのを境に、百は「部の球が切れた」「テレビの配線が分からない」「料理を作りすぎたからおすそ分け」と、ありとあらゆる理由をつけてがを頻繁に訪れるようになった。
最初は戸惑っていた尾も、次第に百が来るのを待ちにするようになり、休に百のアパートへでかけていくことすら増えていった。「姪っ子の面倒を見てやってるだけだ」「親戚付きいだろ」と言い訳を並べる夫に、私が信を募らせるたび、の関係はえ切っていった。
「おはいつもに籠もって本ばかり読んで、がない」 「子供ができないからって、ヒステリックに俺を監するなよ」
尾のからる言葉は、を追うごとに棘を帯びていった。
平の帰宅は夜に及び、休は「休勤だ」と言ってを空ける。夫婦の会話は完全に途絶え、私はアパートで、膝を抱えて夜をかすことが常になっていた。
それでも私は信じたかった。
尾が疲れているだけだと。子供ができないプレッシャーからに逃げているだけだと。
いつか私の努力が実を結び、赤ちゃんを授かることができれば、あの優しくて誠実だった夫が戻ってきてくれるはずだと——。
そんな私の切ない祈りは、百が所に引っ越してきてからちょうどが経った私の歳の誕の夜、無残にも々に踏みにじられた。