"認知症の父を「逮捕しろ」と叫ぶ姑――孫の一言で形勢逆転" 第1話
突然崩れった常
澄み切ったの朝、玄関のドアが勢いよくきました。
「お母さん、はおじいちゃんの命だからね! 絶対に忘れないでよ!」 トーストをくわえたの娘・音(かのん)が、ローファーの踵を踏みながらびしていきました。
そのろから、ネクタイを締めたスーツ姿の息子・亮太(りょうた)が靴を履きながら顔を覗かせます。 「母さん、ってくるよ。音の言う通り、の法のこと頼むな」
社会になったばかりの息子の背は、いつのにかき夫そっくりに逞しくなっていました。 「はいはい、分かってるわよ。とも気をつけてね」 を振って見送る私の目が、ふっとくなりました。
あの騒から、もうもの歳が流れていました。 認症を患い、に静かに旅った私の父。 その父を、幼かった亮太と音は本当によく支え、介護を伝ってくれたものでした。
私の名は佳苗(かなえ)。 歳のとき、同じ会社の先輩だった歳の夫・良彦(よしひこ)と恋の末に結婚しました。 やがて男の亮太と女の音というの子宝にも恵まれ、郊に願のマイホームも購入しました。
穏やかで誰に対しても優しい夫と、元気いっぱいのの子どもたち。 質素だけれど笑顔の絶えない、絵に描いたような幸せがずっと続くのだと信じて疑いませんでした。
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けれど、運命の歯はあまりにも残酷な速さで狂い始めました。
音がちょうど歳を迎えた直、義父と私の実母が相次いで病に倒れ、息を引き取りました。 て続けの幸に族全員が打ちひしがれる、それからわずか。 今度はの黒柱であった最の夫・良彦が、突然の病で帰らぬとなってしまったのです。
夫が息を引き取ったとき、私は歳でした。 に学になったばかりの亮太と、保育園のクラスに通う歳の音。 幼いのを握りしめながら、私は暗の底へ突き落とされたような絶望に震えていました。
(これから先、私でどうやってこの子たちを育てていけばいいの……?)
押し寄せる将来へのと、夫を失った底れぬ孤独。 押し潰されそうになりながらも、私は必に奥歯を噛み締めました。
母親である私が倒れるわけにはいかない。 どんなに辛くても、子どもたちのでだけは絶対に涙を見せないと、固くに誓っていました。