"母が泊まらない理由" 第11話
帳の告と「私の部」
湯気のつ凍うどんをすすり終えると、部には穏やかなの差しが満ちていました。 直は温くなった湯呑みを指先で回しながら、ずっと胸の奥につかえていた問いをにしました。
「母さん、このさ……なんで泊まらなかったの?」
こたつの向こうで器を片付けていたかず子のが、わずかに止まりました。
「またその話? 直は本当にしつこいわねえ」 「分かってるよ。でもさ、部が気に入らなかったのかなって、ずっと気になってたんだ」
「部は派だったわよ」 かず子はちがって布巾でテーブルを拭き、直と線をわせました。
「るくて、通しも良くて、とても綺麗だったわ」 「じゃあ、どうしてさ。何が嫌だったんだよ」
問い詰めるような息子の声に、かず子は静かに子を引き、再び直の正面に座り直しました。 そして、使い込まれた茶托に目を落としながら、静かに切りしました。
「あんた、あの部のこと、何度も『母さんの部』って言ったでしょう?」
「……言ったよ。母さんがいつでも泊まれるようにとってさ」 「私の部はね、ここにあるのよ」
かず子は両を広げ、自分のさな畳をおしそうに見渡しました。
「たまに遊びにって、晩泊めてもらうのは嬉しいのよ。 でもね、あそこが『私の部』だって言われると、なんだか落ち着かないの」
直は眉をひそめ、母の真を図りかねて言葉を詰まらせました。
「将来、何かあったときのために帰れる所があるのは、いわよ。 困ったことがあれば、あんたたちに相談するし、そこは頼りにしてる」
かず子は湯呑みを両でそっと包み込み、ゆっくりと言葉を続けました。
「でもね、今は朝起きて、自分の都でかけて、自分の鍵で帰ってくる所は、ここなの。 私の暮らしは、このさな部にあるのよ」
それは、親子のを拒絶する言葉ではありませんでした。 の自したとして、自分のを自分ので歩み続けているの、凛とした宣言でした。
直は胸を突かれたように息を呑み、母の言葉をただ受け止めることしかできませんでした。