"母が泊まらない理由" 第10話
ペンで埋まったカレンダー
こたつの横に座った直の目に、真っ先にび込んできたのは壁掛けのカレンダーでした。
信のノベルティのような簡素なカレンダーでしたが、その目には、驚くほどびっしりとペンで予定がき込まれていました。
黒いペンでかれた「パート」の文字は、週に。 その隙を縫うように、青や赤のペンで「体操教」「読会」「お直し」「買いし」といった文字が几帳面に並んでいました。
「……母さん、この『お直し』って何?」 直がカレンダーを指差して尋ねると、台所でお湯を沸かしていたかず子が振り返りました。
「ああ、それね。所のお友達に、の裾げやリメイクを教わってるのよ」 「母さん、昔から裁縫なんての苦だったじゃないか。 俺の袋の紐が抜けたときだって、通すのにもかかってってたろ」
「あの頃はあんたを育てるのに忙しかったのよ」 かず子は急須にお茶を注ぎながら、楽しそうに笑いました。 「今はなりに、おしゃべりしながらちくちく縫うのが楽しいの」
お茶とお茶請けの煎餅をこたつに置くと、かず子は計を見げました。 「お昼、凍うどんでいいかしら? 悪いんだけど、私、今は半にはかけなきゃいけないのよ」
「え? 仕事?」 「ううん。芸の仲と、公民館のバザーを見にく約束をしてるの」
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直は目を丸くしました。 「へえ……友達、できたんだ」
「失礼ねえ。友達くらいできるわよ」 かず子は湯呑みを両で包み、し誇らしげに顎をげました。
「パート先のたちとも、に度はお昼に美しいランチをべにってるしね」
直が母の暮らしを像するとき、そこにはいつも、暗い部できりでテレビを見つめる母の姿がありました。 自分が構ってやらなければ、母は孤独に押し潰されてしまうのではないか。 そんな根拠のないい込みを、ずっと抱え続けていたのです。
けれど、目のにあるのは、友からもらったという作りの柚子ジャムであり、図館から借りてきた料理本であり、びっしりと詰まった翌週の予定でした。
「……俺さ」 直は湯呑みを見つめたまま、ぽつりと言いました。
「母さんは休みのは、ででじっとテレビを見てるだけだとってたよ」
「テレビも見るわよ。見たいドラマがたくさんあるんだから」 かず子は笑いながら、こたつ布団の端を直しました。
「でもね、直。あんたがうほど、私は暇じゃないのよ」
その言葉には、誰かに依することなく、自分のでを丁寧に紡いできたの、静かで確かな誇りが満ちていました。
直は胸の奥をぎゅっと掴まれたような覚を覚えながら、自分の浅はかさを突きつけられていました。