"同窓会で「席はない」と笑われた私に、若女将が一礼" 第4話
駅の喫茶とすれ違う記憶
駅のロータリーに面した純喫茶『ル・ポワ』のドアをけると、カランコロンとレトロなベルの音が鳴った。
奥の窓際の席に、のスーツを着た麗子が座っていた。首元には粒の真珠、指にはぶりのエメラルドの指輪がり、卓には級ブランドの革製バッグがでんと置かれていた。
「さん! こっちよ、こっち!」
招きする麗子の声に、周囲の客がちらりと線を向けた。
が席に着くと、麗子は目を細め、が着ているなウールのチュニックと綿のスラックスを、のてっぺんから爪先まで品定めするように見つめた。
「まあ……さん。ずいぶんになっちゃって、最初誰だか分からなかったわよ」
「ふふ、もうですからね。麗子さんは本当にお変わりなくて、お肌もツヤツヤしてお元気そうね」
「当たりじゃない。定期にエステにも通ってるし、主の会社は今、男が継いで順満帆よ。孫もこの、京の名私に現役格してねぇ」
注文したアメリカンコーヒーが運ばれてくると、麗子はそこから分、て板にのように自話を続けた。夫の建設会社がいかに元で幅を利かせているか、息子の嫁がいかに自分に気を使っているか。
は相槌を打ちながら、ただ穏やかにを傾けていた。
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昔から麗子はこうだった。誰かに自分の優位を示していないと、でたまらないなのだ。
やがて麗子は、コーヒーカップをソーサーにコトッと置くと、本題に入った。
「それでね、今来てもらったのは、同窓会の名簿のことなのよ。あなた、ずっとこの町にいるでしょう? 何か連絡がつかないがいてね、所を探すのを伝ってほしいの」
「ええ、私に分かる範囲でよければ、んでお伝いするわ」
「助かるわ。……ところで、さん」
麗子は急に声を潜め、探るような目での顔を覗き込んできた。
「恵子さんがね、先週松乃にち寄ったに、あなたを見かけたんですって。染めの作務を着て、廊で客用のお布団を台で運んでたって」
はさく微笑んだ。「ええ、葉の期は忙しいですからね。がりないは、私も伝っているのよ」
その答えを聞いた瞬、麗子の瞳の奥に、隠しきれない優越のがパッと灯った。
「やっぱり本当だったのね。宗郎さんがくなってから、あの宿も経営が傾いて、に渡ったって噂で聞いてたのよ。それであなた、あの歳になっても雇われ仲居として、こき使われてるんでしょう? ……本当に、気の毒にねぇ」
は否定も肯定もしなかった。
宗郎がくなったも宿は息子が継いでおり、に渡った事実などない。
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布団を運ぶのも、自らんで体をかしているだけのことだった。けれど、ここでわざわざ「私が女将です」と誇示することに、何のがあるだろう。
「……毎、やることがあって退屈しないわよ」
がそう答えると、麗子は満げにきく頷いた。
「じゃあ、ちょうどいいじゃない! 同窓会の当も、あなた、お酒やお料理のお運びをし伝ってちょうだいよ。慣れてるんでしょう? 仲居さんが増えれば、宴会もスムーズにむし、みんなもぶわ」
は静かに麗子の目を見つめ返した。
「当は……私も、の同級として、皆さんと昔話を楽しみに伺うつもりよ」
「あら、そう?」
麗子はあからさまに元を歪め、満そうに伝票をの目のへとツッと滑らせた。
「会費、万千円よ。仲居さんのパート代からすには、結構なでしょうけど……無理しなくていいのよ? せないなら、最初からそう言ってくれればいいんだから」
コーヒー杯分の伝票。計千百円。
は何も言わず、財布から銭と千円札を取りすと、伝票のに静かにねて置いた。