"戸籍の中のもう一人の妻" 第2話
スマートフォンのとの記憶
その名を目にしたのは、結婚目ののことでした。
夕のデリバリーを注文するため、リビングのテーブルに置かれていた健太のスマホをにしたときでした。 LINEの通画面の奥、の付で既読スルーされていたトーク履歴に、その文字が残っていたのです。
『真理』。
当、何の気なしに「この、誰?」と尋ねた私に、健太は平然とした顔で笑いながら答えました。 「ああ、学の同級だよ。卒業してから全然連絡取ってないし、何かの違いで送ってきたんじゃないかな」 健太は私の目ので、迷うことなくそのトーク履歴を削除しました。
ろめたいことなど何もないという、完璧な笑顔でした。 私もそれ以、疑うことすらしませんでした。
あの頃の私たちは、共働きでを貯め、ようやく横浜内に築マンションを購入したばかりでした。 宅ローンの審査が通った、何もないガランとしたリビングで、健太は私を抱きげてぐるぐると回りました。
「結、僕たちここで緒に暮らすんだよ。絶対に幸せにするからね」
元で囁かれたあの誓いの言葉を、私は疑う余もなく信じ込んでいました。 の結婚活。きな喧嘩もなく、穏やかで平穏な々を積みねてきたはずでした。
広告
私は背筋をピンと伸ばし、持っていた濡れた傘の先端をにコツンと突きました。 驚くほど静かで、自分でも寒気がするほど落ち着いた声がからました。
「……この報、いつ反映されたものですか?」
窓の職員が、老鏡の位置を直しながらキーボードを叩きました。 私の取り乱さない態度に、しだけ堵したような気配配が見えました。
「のですね。公館……英国本国使館を通じて続きが受理されています」
の、。 その言葉が、私のの奥でカチリと音をててなりました。
の、横浜は記録な猛暑でした。 私の母が急性胆嚢炎で倒れて民病院へ緊急入院し、私は仕事を終えてから毎のように病へ詰め、にわたって母に付き添っていました。
同じ期、健太は「イギリス側との極秘プロジェクトがきした」と言って、急遽を渡りました。 当初はかで帰ると言っていたはずが、には期の延を告げられ、にはイギリス支社への異が決まったと話本で済まされていました。
張などではなかったのです。 あの男は、母の病で私がすり減っていたあの、イギリスへ結婚式を挙げにっていたのです。