"毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった" 第6話
面に引かれた線
林さんはしい図面を広げ、現の杭と照らしわせながら説を始めた。
「こちらが、しず子さんのの境界です。昔の図面と、残っていた杭の位置をわせると、この線になります」
林さんが指した先を見て、私は息を呑んだ。線は、ゴンダさんのの壁のを通っていた。の半分くが、私ののに建っているという。
「そんなはずないでしょう!」
沼さんが、林さんの説を遮った。
「私たちはもここにんでるのよ。そんな線、あんたが勝に引いたんでしょ」
林さんは落ち着いた声で答えた。
「これは私が勝に決めた線ではありません。昔の図面と、現に残っていた杭をもとに確認したものです。位置を示す根拠は、このつの杭を結んだ線です」
勝夫さんは図面を覗き込み、顔をしかめた。
「親父から、そんな話は度も聞いていないぞ。何かの違いじゃないのか」
「私も、祖父から聞いたことがありません」
そう答えながら、私のは図面の端を握りしめていた。らないうちに、自分ののに隣のが建っている。そんなことが本当にあるのだろうか。私には、すぐに受け止められなかった。
林さんは説を続けた。
「測量の結果は、図面と記録に残っています。この内容を確認していただき、境界の確認に署名と押印をお願いします」
広告
勝夫さんは黙り込んだ。沼さんは、図面から目をさない。
「押すもんですか。こんな線に判なんか押せるわけないでしょう」
とめさんが、静かにをいた。
「沼さん、しず子ちゃんに毎朝『引っ越しろ』と言っていたね。ゴンダさんのの半分は、ののに建っていたんだよ」
「とめさんには関係ないでしょう」
「関係あるさ。私のの角から始まった話なんだから。それに、図面を見れば分かることだよ」
私は林さんに尋ねた。
「このの境界について、私のに古い記録が残っている能性はありますか?」
「あるかもしれません。の図面や、貸し借りの約束をいたものがあれば、今の状況を確かめる参考になることがあります。必ず残っているとは言えませんが、度探してみてください」
私は、とめさんの言葉をいした。父の類箱が押し入れの奥にある。あの箱を、今度こそけてみようとった。
「分かりました。に戻って探します」
林さんは、境界の確認をすぐに求めず、いったん持ち帰ることにした。ゴンダさん夫婦は先に帰った。沼さんは最まで、私をにらんでいた。
に戻ると、私は押し入れから父の類箱を引っ張りした。箱の表面には、うっすらと埃が積もっていた。父がくなってから、度もけていない箱だ。
「お父さん、今夜だけ見せてもらいますね」
仏壇に声をかけて、箱の蓋をけた。には、古い領収やの修繕記録、の図面がねて入っていた。ひとつずつ取りしていると、いちばんに、祖父の字で「ゴンダさんの件」とかれた封筒が見つかった。