"毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった" 第2話
朝の声
翌も、その次のも、沼さんは同じにやって来た。
「引っ越しなさいよ」
「まだいるの?」
「いつまでここにいるつもり?」
玄関先で顔をわせるもあれば、私が窓をけたにから呼びつけられるもあった。沼さんの言葉は、しずつ変わっていく。けれど、最には必ず「てきなさい」と言った。
最初のうちは、私にも何か悪いところがあるのかもしれないとった。のに鉢を置いたのが邪魔だったのか。柿の葉が沼さんの庭へ落ちていたのか。それとも、私が気づかないうちに何か失礼なことをしていたのか。顔をわせるたび、理由を聞いてみた。
「私に直すところがあれば、教えてください」
「だから、あんたが嫌いだって言ってるでしょ。何度言えば分かるのよ」
返事は、いつも同じだった。
に入ると、沼さんの文句は朝だけでは済まなくなった。私が庭でを抜いていると、塀の向こうから声がする。
「ちょっと、あんたの柿の葉がうちに落ちてくるのよ。掃除するのは誰だとってるの?そんな、根元から切りなさいよ」
「柿の葉は毎朝、私が拾っています。もし取りきれていない分があったら、教えてください」
「答えしないで。洗濯物も目障りなの。寄りの着なんか見たくもないわ。干すならのにしなさいよ」
洗濯物はから見えない庭の奥に干していた。
広告
それでも沼さんは、干し方が気に入らないと言った。ゴミのには、袋の結び目が緩いと文句を言われた。私は、ゴミをしたに袋が破れていないか、わざわざ確かめるようになった。
「袋の結び方まで、何か気に障りましたか?」
「ゴミを見るだけで朝から気分が悪いのよ。あんたがしたものは、何もかも気に入らないの」
「そうですか。では、次から気をつけます」
「何を気をつけるのよ。分かってないくせに」
沼さんの言葉は、こちらが何をしても止まらなかった。謝っても、直しても、次の文句がてくる。私はノートに付と刻、それから言われたことをき続けた。くたび、しだけ息がしやすくなった。
ある朝、庭で柿の葉を拾っていると、隣の塀の向こうから、とめさんが顔をした。とめさんは歳。夫をくしてからもで暮らしていて、腰はくなったが、話し好きで、所の様子をよくっていた。
「しず子ちゃん、また朝からやられてたね。塀越しに全部聞こえたよ」
「とめさん、すみません。朝から騒がしくして」
「しず子ちゃんが謝ることじゃないさ。あの、は私に同じことを言ってたんだよ」
私は驚いて、とめさんを見た。
「とめさんにも?」
「そうさ。私が庭にるたび、が派だ、声がうるさい、歩くのが遅いってね。私は倍にして言い返したから、途で飽きたらしいけど。
しず子ちゃんは黙って聞くから、ちょうどいいとってるんだろうね」
とめさんはそう言って、塀の向こうからさく笑った。私は笑えなかった。沼さんが私を嫌う理由は、やはり分からないままだった。