"毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった" 第1話
「引っ越しなさいよ」
「引っ越ししろって言ってるのよ。あんたの顔を見るだけで朝から気分が悪いの。さっさと、どこへでもきなさいよ」
の朝。台所の窓をけた途端、の向こうから鳴り声がんできた。
私はにしていた湯のみを、そっと流し台に置いた。向かいのの沼さんが、ので腕を組んでいる。隣には夫の勝夫さんもいた。勝夫さんは、妻を止めるでもなく、しれたところにっていた。
「沼さん、おはようございます。私、何かお気に障ることをしましたか?」
声を荒らげないよう、ゆっくり尋ねた。沼さんは、私の顔を見てを鳴らす。
「理由なんかないわよ。あんたが嫌いなの。嫌いな顔が毎朝見えるのがならないの。だから引っ越しなさいって言ってるの」
「嫌いとおっしゃられても、私には直しようがありません。せめて朝くからきな声をすのは、ご所の迷惑になりますから」
「ご所なんからないわよ。私は言いたいことを言ってるだけ。も来るからね。あんたが引っ越すまで、毎朝来てやるわよ」
沼さんはの端をゆがめ、勝夫さんを連れて自分のへ戻っていった。私はしばらく、けた窓のにっていた。朝の空気は澄んでいるのに、胸のだけがかった。
私は歳。このでまれ、父と母、祖父母と緒に暮らしてきた。
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結婚してからも、夫と息子とこのにみ続けた。夫がくなってからは、もうになる。息子は就職をに町をて、今は別の県で暮らしている。
になっても、このをれるつもりはなかった。庭の柿のは祖父が植えたものだし、縁側の柱には、息子がさい頃につけた傷が残っている。台所の棚も、夫が使いやすいように作ってくれた。ここには、族と過ごした々がつずつ残っていた。
その晩、仏壇ので、私はしいノートをいた。夫の写真に向かってをわせてから、今のことをいた。
「、朝。沼さんから『引っ越しなさい』『あんたが嫌い』と言われた」
付と刻も忘れないようにいた。何かあったに困らないように、という気持ちだった。自分の記憶に自信がないわけではない。ただ、毎朝のことになれば、いつ、何を言われたのか曖昧になるかもしれない。
「あなたも、よく記をつけていましたね」
夫は、仕事で嫌なことがあったも、計の入りも、帳にき留めていた。私はその習慣をいしながら、ノートを閉じた。
翌朝も、になると沼さんの声が聞こえた。
「まだいるの?しぶといわね。何をいてるのよ」
「毎朝のことを、付と緒にいています。この頃、忘れっぽくなりましたから」
「いたって何にもならないわよ。
あんたの字なんか、誰も読みやしないんだから。さっさと引っ越しなさい」
私は返事をせず、ノートにその言葉をきした。
このでまれて。計の針が朝にづくのを、これほど気にするようになるとはわなかった。