"父の葬儀中「飯を作れ」と怒鳴った夫に、参列者が…" 第8話
冊の反撃と職の防波堤
そのの夜、私は田社から渡されていた名刺をに取り、話をかけた。
『は支えってきている。困っているがいたら助けてあげなさい。そうすれば、いつか美穂も誰かに助けてもらえるから』
父の言葉が、の奥に響いていた。
話にた田社は、私の話を静かに、度も遮ることなく最まで聞いてくださった。
『美穂さん、よく連絡してくださいました。それはもう、夫婦の仲という次元を完全に超えた、悪質な付きまといと脅迫です。すぐに揺する必はありません。私がから信頼している、婚問題と女性の権利にい弁護士を紹介します』
翌、田社に付き添われ、私は駅の法律事務所を訪れた。
迎えてくれたのは、代半ばのベテラン弁護士・先だった。
私は持参した袋から、証拠の品を机のにつずつ並べた。健からの異常な着信履歴を記録したノート、留守番話の録音、森本さんが撮してくれた玄関での襲撃画。
そして最に、冊の学ノートを机のに積みげた。
「これは……?」
「結婚してから、夫に円単位で報告するために毎つけさせられていた計簿です。夫に渡していた私のパート代の全額と、夫から渡されていた万円の遣いの記録、そして毎の買い物のレシートがすべて貼ってあります」
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弁護士は鏡を押しげ、番のノートをに取った。パラパラとページをめくる音が、静かな事務所に響く。
「……素らしいですね。、も欠かさずにレシート付きで記帳されている。これは完全に、プロの帳簿ですよ」
弁護士はあるページで指を止めた。
「パート代万円を全額夫に渡し、ご自の遣いは万円。同じに、ご主はゴルフクラブに万円、級クラブでの費に数万円……。お父様への誕プレゼントのカーディガンを返品させた付まで、几帳面に記録されている」
私は恥ずかしさで俯いた。、言われるがままに搾取され続けてきた自分のさがけなかった。
しかし、弁護士は温かい声で私の顔を見げた。
「美穂さん、恥じることなど何つありませんよ。配偶者の収入を奪い、活に必なおまで極端に制限して支配する……これは派な『経済DV(モラルハラスメント)』です。そしてそのかぬ証拠を、ご主自がかけてあなたに作らせていたのです。皮肉なものですね」
さらに、弁護士は健の求を刀両断した。
「お父様の遺産を折半しろというご主の主張は、法に完全な誤りです。相続した財産は民法の『特財産』であり、婚の財産分与の対象には切含まれません。
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このもお父様の預も、すべてあなたのものです。円たりとも渡す義務はありません」
肩からスッと荷がりていくのをじた。
「むしろ、渡さなければならないのはご主の方です。結婚期に築かれた預貯は、名義に関わらず夫婦の共財産です。あなたのパート代も含まれていたご主名義の座の預は、きっちり半分を請求できます。の経済暴力、そして葬儀での暴言に対する慰謝料も含め、徹底に請求しましょう」
そののうちに警察へ被害届を提し、健に対してストーカー規制法に基づく警告と、弁護士からの受任通が送達された。
だが、追い詰められた健の暴は、そこでは止まらなかった。
警告がされてから数。
私がパートとして勤めている元の務『務』の敷内に、見覚えのあるが猛スピードで滑り込んできた。
夕方、事務所をようとした私のに、ボロボロのを着た健がちはだかった。
「美穂! 話を聞け! 弁護士なんかてやがって! 財産分与だの慰謝料だの、ふざけんな! 俺は百万返さなきゃいけないんだぞ! おのせいでめちゃくちゃだ!」
血った目で腕を掴もうとしてくる健。
その、事務所の引き戸が激しい音をてていた。
「おいコラ! うちの敷で何やってんだ!」
びしてきたのは、社のさんと、作業着を着た柄な職さんたちだった。職さんたちは私のに壁のようにちふさがり、健を鋭く睨みつけた。
「美穂をこっちへ寄こせ! そいつは俺の嫁だぞ!」
「ここはうちの会社の敷だ! 部者が勝に入ってきて従業員にをそうとするなら、容赦しねえぞ!」
健が逆し、職さんのの胸倉を掴んだ。
しかし、筋骨隆々の職さんは微だにせず、たい目で健の首を掴み返した。
「兄ちゃん、それ以やったら本当に豚箱きだぞ」
すでに社の奥さんが通報を済ませていた。
数分、サイレンを鳴らしてパトカーが到着した。警察官は健の顔を見るなり、元の類と照らしわせた。
「佐藤健さんですね。先、警告をしたばかりのはずですが……奥様の職に押しかけ、さらにに暴を働いた以、署まで任同してもらいます」
「放せ! 俺は悪くない! 俺のを狂わせたのはあいつだ!」
喚き散らしながらパトカーに押し込まれていく健の姿を、私は職さんたちの背のろから、めた目で見つめていた。
恐怖はもうなかった。私の周りには、理尽な暴力から守ってくれる温かいたちが、こんなにもたくさんいてくれたのだ。