みかん小説
本棚

"結婚23年目、35万円を渡した妻が持ち帰ったもの" 第3話

帰ってきた妻

の夕方、が帰ってきた。駅まで迎えにくと、彼女はきな旅鞄と、古びた布の袋を持っていた。

「お帰り。疲れただろう」

「ただいま。し疲れたけど、楽しかったわ」

の顔には、発にはなかった穏やかさが戻っていた。駅からまでののり、彼女は窓のを眺めていた。何度か、のことをいすように微笑んだ。

に着いてから、私は旅鞄を玄関から運んだ。布の袋はが自分で持ち、居の隅に置いた。

夕は、私が買ってきた弁当と、が持ち帰った漬物で済ませた。は帰りのでべたものや、母親とかけたの話をしてくれた。

「お母さんと、駅の堂にったの。昔は父とでよくったところなんだけど、建物がしくなっていてね」

「へえ。何をべたんだ?」

「母はぷらうどん。私は菜そば。母は全部べられなかったけど、残った分もしもらったの」

その話を聞いて、は本当に楽しんできたのだとった。母親とで事をした。それだけのことが、彼女には切なだったのだ。

事のあと、は荷物を片付け始めた。私は居で聞を広げながら、古びた布の袋を見た。

「それは何が入ってるんだ?」

はを止めた。

「お母さんから預かってきたものよ」

「お産か」

「そうね。お産みたいなものかしら」

広告

返事はどこか曖昧だった。私は聞をたたみ、彼女の隣に座った。は袋のをほどき、から品物をつずつした。

最初にてきたのは、きれいに畳まれた古い着物だった。はし褪せていたが、丁寧に入れされている。次に、角が擦り切れたアルバム。そのから、何冊ものノートがてきた。

最に、い封筒が現れた。

表には、震えるような文字で「へ。今まで言えなかったこと」とかれていた。

はその封筒を見つめたまま、しばらくかなかった。

「これは……?」

私が聞くと、はさく息を吐いた。

「母が私に渡してくれたの。ずっと言えなかったことがあるって」

封筒をけ、から便箋を取りす。のが、読み始めてすぐに震えた。

「丈夫か?」

私は顔を覗き込んだ。は唇を噛み、何度も文字を追っていた。それから、読み終えるに便箋を私へ差しした。

「あなたも読んで」

私は受け取った。便箋には、母親の器用な文字が並んでいた。最初のを目で追った、私は息を止めた。

そこには、娘にい伝えられなかった寂しさがかれていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: