"「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密" 第5話
たいと目の返信
の役員会で、蛇川会は全員ので正式に言い放った。
「式典の受付は、根岸さんにお願いすることにしました。それから、記誌の宛名きも、今は私が自分できます。事なお客様が勢いらっしゃるのに、ボロボロの自転で来るようなが受付に座っていては、会の品格が疑われますからね。静子さんも、ならそのくらいのご配慮はご理解いただけますわよね?」
座敷のが、を打ったように静まり返った。
誰も何も言えない、トメさんが鋭い声を張りげた。
「蛇川さん、字のいを言うなら、静子ちゃんの元にも及ばないだろうが! この、会の名簿も案内状も、全部静子ちゃんがタダで丁寧にいてきてくれたんじゃないか!」
「トメさん、字の問題じゃないと言っているのよ」蛇川さんはたく言い放った。「見た目の話をしているの。来からは名簿も全部、業者に頼んで活字で印刷するつもりよ。父がいつも言っていたわ。『のにつ者は、まずなりと体裁からえなさい』ってね。町の恥を晒すわけにはいかないのよ」
「蛇川さん、よく分かりました」
私はすっと背筋を伸ばし、く礼した。
「当は、の平会員として、末席から参加させていただきますね」
蛇川さんは勝ち誇ったように頷き、根岸さんは気まずそうに元の類ばかりを見つめていた。
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集まりが終わって公民館をると、鉛の空からたいがポツポツと落ちてきていた。
傘を持っていなかった私は、青い自転を押しながら、で濡れた駅通りをとぼとぼと歩いた。
タバコの軒先に、あの共同募の赤い箱がぽつんと置かれていた。通りは途絶え、たいの音だけが響いている。
私は銭入れをけ、残っていた百円玉を枚、箱の投入に入れた。
チャリン。
さな属音が、静かな通りに響いた。
誰も見ていない。褒めてくれるも、名を貼りしてくれるもいない。
でも、これでいいのだ。
、勉とで決めたのも、まさにそういうことだった。
支援を受ける子どもたちが、顔もらない誰かにをげる必がないように。施しを受けているという引け目をじずに、ただを向いて歩いていけるように——。
ずぶ濡れになってに帰り着くと、玄関の引き戸がガラリとき、勉がタオルを抱えてっていた。
「ずぶ濡れじゃないか。く入れ」
「すみません、あなた。話しいが引いてしまって」
茶のでいお茶をすすりながら、私は今の来事を淡々と話した。受付をされたこと、宛名きも断られたこと、来からは名簿の耕も印刷に変わること。
勉は眉つかさず、静かに最まで聞いていた。
そして、湯呑みを畳に置くと、ぽつりと言だけ言った。
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「……静子。言ったらどうだ? のこと」
私は驚いて顔をげ、すぐに首を横に振った。
「あなた、それを言ったら『私はケチじゃありません』って言い訳するためにかすことになってしまいます。そんなの、あの子たちに失礼です。あの子たちは、私たちを庇うためにをいてくれたんじゃないんですから。それに……『名をさない』って最初に決めたのは、あなたですよ」
勉は黙り込み、やがてさく息を吐いた。
「……そうだったな。すまん。おばかりに嫌ないをさせて」
「いいんですよ。言われ慣れていますから。それに、もったいないから物を事にするのは、私の本当の性分ですもの」
「静子の字は、いい字だ」
勉がに言った。
「俺は、おがあの子たちに宛ててくの字を、ずっと見てきた。誰よりも温かくて、綺麗な字だ」
寡黙な夫がそんなことをにしたのは、結婚して初めてのことだった。胸がいっぱいになり、私は湯呑みを抱えたまま、しばらく顔をげることができなかった。
。私たちはいつものように郵便局へ向かい、百回目の払込みを済ませた。
ちょうど。通算で百ヶのが流れていた。
に帰ると、郵便受けに基からのい封筒が届いていた。
今届いた、最の。
『この、無事に学を卒業し、建築設計の会社に就職が決まりました。
、僕の学業を支えてくださり、本当に、本当にありがとうございました。 同封していただいた記切は、どれもあまりに美しく、使うのがもったいなくて枚も使えませんでした。すべて僕の切な宝物として、アルバムに切に保管してあります。 基を通じておをお送りできるのは、規則により今回が最になります。 いつか、僕がのになった、直接あなたにお会いして、「ありがとうございました」とをげることが、僕の今のです』
涙はなかった。ただ、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「あなた、最のお返事に、何か同封したいんですけれど」
「何をだ?」
「私たちの自転の写真を、台並べて。『元気で暮らしています』って、それだけを伝えたくて」
勉は黙ってちがり、押し入れから古いフィルムカメラをしてきた。
玄関のに、褪せた青と緑の自転を台並べ、勉が枚だけシャッターを切った。駅のカメラでそののうちに現像してもらい、私は万で、差の名をかずにいを認めた。
同封したのは、写真と、最の桜の記切。
の結びには、いつもの言葉をだけき添えた。
『自転は、もったいないからまだ乗れます。とも、元気にやっています』