"「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密" 第3話
百枚の桜の切
翌朝、。
朝の残る庭先にると、勉が玄関のにしゃがみ込み、古いブリキの油差しをに作業をしていた。
「静子、チェーンの張り、直しておいたぞ。油もたっぷり差した」
「ありがとうございます。あなたの緑のも差してくれたんですか?」
「ああ、台ともな」
勉は軍で汗を拭い、ちがった。くを語らないだが、こうして、私の元をずっと守り続けてくれた。
私たちはそれぞれの自転に跨がり、並んで駅の郵便局へと向かった。勉がしをり、私がそのすぐろをついていく。角を曲がるは必ずろを振り返って私を確認する。、何つ変わらない景だった。
郵便局の窓へき、枚の払込取扱票を差しす。
振込先の欄には、から変わらない『交通遺児・遺児育英奨学会』の文字。通信欄には、あらかじめ印刷された寄付の項目。
私は胸ので、静かに数字を数えた。
(今で、百回目……)
「さん、今もありがとうございます」
顔なじみの窓の女性が、慣れたつきで控えを処理しながら、優しく微笑みかけてくれた。
「それから、いつもの記切ですね。今はの桜の絵柄のシートがていますよ」
「まあ、綺麗ですね。それを枚だけいただけますか?」
「さんは、いつも記切を買っていかれますね。
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ご族におでもされるんですか?」
「ええ。綺麗な切をもらうと、きっと嬉しいだろうとうがいるものですから」
窓の女性は「素敵ですね」とにっこり笑い、満の桜が描かれた円切を枚、丁寧に渡してくれた。
郵便局をると、勉が自転のスタンドをげながら、の青空を見げていた。
「今も、桜が綺麗だな」
「そうですね、あなた。……今で、ちょうどになりますね」
勉は何も言わず、ただく頷いた。
そのの夜、私は茶のの茶箪笥のに座り、番のい引きしを静かにけた。
には、古い封筒の束が、輪ゴムで代ごとにきちんと分けられてぎっしりと収められていた。差の欄には、すべて同じ育英基の事務局のスタンプが押されている。
番に置いてある、比較しい束から通のを取りした。
に届いた、ある男の子からの最初のだった。
『初めまして。この、に入学することができました。 見らぬ僕のために、毎温かいご支援をいただき、本当にありがとうございます。 いただいた支援で、しい制と教科を揃えることができました。入学式の朝、ピカピカの制を着て、胸を張ってをくぐることができました。 父が事故でくなってから、母はずっと朝から晩まで働き詰めです。
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僕もくになって母を楽にさせたいですが、今はまず、いただいたチャンスを無駄にしないよう、懸命勉を頑張ります』
湯呑みをにした勉が、私の背からそっとを覗き込んだ。
「制、か……」
「ええ、あなた。あの子、入学式に胸を張ってけたって、最初のにそういてくれたんですよね」
勉は鏡の奥の目を細め、の角に目を留めた。そこには、に私たちが同封した、古い桜の記切が貼られずに、そのままさなビニール袋に入れて切に保管されていた痕跡が残っていた。
「今ので、目……最のになりますね。学を卒業するですから」
「そうだな。また、読み返してるのか」
「ええ。のお便りには、学の講義が本当に面いっていてありましたから」
「そうか」
勉はそれだけ言うと、聞に線を戻した。けれど、何分経っても聞のページは枚もめくられなかった。