"終電の次の駅は私の名前――ホームには亡き祖母がいた" 第9話
の扉
私は、の扉からりた。
がホームのない所へる。けれど、落ちることはなかった。そこには線があり、に黒いが広がっていた。のかりが背を照らしている。側では、祖母が私を呼び続けていた。
「美咲、戻っておいで」
私は振り返りそうになった。けれど、運転席の声がに残っている。
「振り返るなよ。まだあんたの番じゃない」
どこから聞こえたのか分からない。目のの暗からか、運転席のからか、それとも自分ののからか。私は振り返らず、線脇を歩き始めた。
ろから、祖母が何度も私の名を呼ぶ。優太の声も聞こえた。会社で倒れた男性が「佐伯さん」と呼ぶ。ホームにいたたちが、いっせいに私を呼んでいる気がした。
私は歩き続けた。元は見えない。何度かにつまずき、膝をぶつけた。暗のでは、へんでいるのか、同じ所を回っているのかも分からない。それでも、背から聞こえる声に答えないようにした。
しむと、方に赤いかりが見えた。さなランタンをげた子の男が、背を向けて歩いている。私は追いつこうと歩幅をきくした。
男は振り返らず、く言った。
「まだあんたの番じゃない」
「あなたは誰なんですか」
「今はらなくていい」
「私は、どこへけばいいんですか」
「自分が帰りたいところまで歩け」
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それ以、男は何も言わなかった。私は、彼のろを歩いた。やがて線の脇に、コンビニのかりが見えてくる。いつも通っているのようだが、板のがし違う。ガラス越しに見える棚も、見慣れた商品の並びに似ているのに、どこかずれている。
歩くにつれて、板のがいつものものに戻っていった。の入りに貼られた商品のポスターも、私が見たことのあるものになっていく。気づけば、線の音が消えていた。
男の背も、ランタンのかりも見えなくなっている。私は、舗装されたのにっていた。し先には駅の改札があり、始発の構内にかりがついている。
その駅名は、いつも使っている駅の名だった。
私は改札へ向かい、ベンチに座り込んだ。スマートフォンを見ると、刻は午をし過ぎている。で寝てから、まだそれほどがたっていない。のひらには汗がにじみ、膝にはさな擦り傷があった。
だったのかもしれない。そういたかった。けれど、側の扉の向こうにいた祖母の声が、まだに残っていた。