"フクと小さなおにぎり" 第8話
鳴り続ける話
フクが初めてでご飯をべた夜、俺たちはしばらくそのをけなかった。ゆいはおにぎりをべ終え、子からりると、フクの皿をのぞき込んだ。
「空っぽだね」
「全部べたね。よかったな」
俺がそう言うと、ゆいは満そうにうなずいた。フクはゲート越しにゆいの指先へを寄せている。由佳は涙を拭きながら、フクのために用したをそっと替えた。
そのとき、リビングのテーブルに置いてあった俺のスマートフォンが鳴った。突然の音に、俺は反射にちがろうとした。
フクが、ばっと顔をげた。にはまだフードがし残っている。目を見き、体がのように固まった。俺はあの話をいした。フクがべているに飼い主がいなくなり、べ終わって顔をげると、誰もいなかった。
話は鳴り続けた。画面を見るためにを伸ばしかけたが、俺はそこできを止めた。由佳も俺の様子を見て、ゆっくり子に座り直す。
俺はに腰をろし、フクの目を見た。
「丈夫だよ。パパはここにいるよ」
話の音が続く。フクは俺を見つめたまま、かない。
「どこにもかないからな。フクと緒にいるよ」
やがて話は切れた。俺はスマートフォンを見なかった。誰からの話か、急ぎの用事か、そのときはどうでもよかった。
広告
フクがもう度べ始めるまで、ここにいることが事だとった。
フクは、しばらく俺の顔を見つめていた。由佳とゆいの方も、何度か確認している。やがて、フクの体からしずつ力が抜けた。さく息を吐き、もう度皿に顔をろす。
カリカリ、カリカリ。
今度は、途で止まらなかった。フクは最の粒までべた。べ終わると、ゆっくり顔をげ、俺たちの顔を順に見た。誰もいなくなっていない。フクはそのことを確かめると、ゲートの隙からをし、ゆいの指先に触れた。
スマートフォンを確認すると、かかってきたのは営業話だった。なくても困ることは何もなかった。もしあのとき、いつものように話へていたら、フクはまたべるのをやめていたかもしれない。
それから俺たちは、部をるときには必ず声をかけるようになった。
「おを取りにってくるね」
「洗濯物を見てくるよ。すぐ戻るから」
フクのの傷が晩で消えたわけではない。急にちがると、今でもはっと顔をげることがある。それでも、俺たちが戻ってくると、しずつ皿へ顔を戻せるようになった。
あの夜から、卓の隣にフクのさな席を作ることにした。フクは族の事のそばで、毎しずつご飯をべるようになっていった。