"消えた卵の秘密" 第8話
暴発する凶気と決の突入
「うぐっ……苦しい……! 息が、息ができない……!」
を転がり回っていた美津さんが、急にきを止めた。
充血して血った瞳が、リビングのテーブルのに残された、もうつのプリンの器へと向けられた。私が凛のために用していた、毒入りの特製プリンだ。
「……あは、あははははッ!!」
美津さんのから、濁った笑い声が漏れた。
髪を振り乱し、よろよろとちがったその姿は、完全に理性を失った獣そのものだった。
「どうせ……どうせ私が助からないなら……! あんたらも連れよ!!」
「……っ!? 凛、逃げて!」
叫んだ瞬、美津さんはテーブルにびつき、残っていたプリンの器を鷲掴みにした。そして、スプーンを握りしめ、鬼のような形相で私と凛に向かって突してきたのだ。
「あの棒猫のガキが!! あんたらがきてる限り、ダーリンはあの女のことをいし続けるのよ!! になさい! これをって、あんたらも今すぐ獄へ落ちなさいッ!!」
「やめて!!」
私は凛を庇って背を向け、覆いかぶさるようにして構えた。
迫り来るスプーンの切っ先。美津さんの狂気に満ちた叫び声が、すぐ背まで迫った——その刹だった。
ガチャリ!!
玄関のドアが乱暴に引きけられ、ドタドタと激しい音が廊を疾してきた。
「茜ーーッ!! 凛ーーッ!!」
聞き覚えのある鳴り声とともに、リビングのドアが蹴破るような勢いでけ放たれた。
広告
「え……陽斗!?」
び込んできたのは、仕事で留守にしていたはずの夫だった。
状況を瞬に察した陽斗は、目を血らせ、スプーンを振りげて私と凛に襲いかかろうとしていた美津さんに向かって、切の躊躇なく突した。
「うおおおおぉぉぉッ!!」
ドスンッ!!
の男の全体を乗せたラグビータックルが、美津さんの脇腹にクリーンヒットした。
「ぎゃあっ!?」
鳴をげて吹きんだ美津さんは、壁際に激突し、に持っていたプリンの器が宙をってフローリングに叩きつけられた。ガラスの破片と黄いプリンが激しくび散る。
「ぐ、う……っ……」
に倒れ込んだ美津さんは、タックルの衝撃と毒の苦痛により、ピクピクと痙攣しながら目を剥いてけなくなった。
「ハ、ハルト……!」
私が呆然と声を漏らすと、陽斗は肩で息を荒げながら、慌てて私と凛に駆け寄ってきた。
「茜! 凛! 丈夫か!? 怪はないか!?」
「う、うん……丈夫……! でも、どうしてあなたがここに……?」
陽斗は額の汗を拭いながら、自分の腰元を指差した。
スーツのズボンのベルトが、バックルの根元から無残にブチリと千切れていた。
「今さ、会社でデスクワークしてたら、急にベルトがバチンと切れちゃってさ……。昔から『靴紐やベルトが切れるのは吉なことが起きる兆』って言うだろ? なんだか胸騒ぎが止まらなくなって、司に頼み込んで退してって帰ってきたんだよ」
「ベルトが……?」
私がぽかんとしていると、私のろから顔を覗かせた凛が、涙を拭いながら静に言った。
「……パパ、それ、単に太っただけだとうよ」
「……私も、そうう」
緊迫した空気の、わず私と凛の声がなった。
陽斗は「えっ、そこ!?」とけない顔をして目を黒させたが、すぐに真剣な顔に戻り、でぐったりとしている美津さんを見ろした。
「……とにかく、警察と救急だ。くしないと、こいつ本当にんじまうぞ」
陽斗の素い通報によって、静かだった宅に、けたたましいサイレンの音がづいてきたのだった。