"消えた卵の秘密" 第6話
吐きされた狂気と告
「いやあぁぁぁぁッ!! オエッ……ゲホッ、ゲホッ!!」
美津さんは喉の奥に指を突っ込み、に膝をついて激しく吐きそうと暴れ回った。
ガラスのテーブルがガタガタと揺れ、プリンの器が倒れて黄いカスタードがラグのに崩れ落ちる。
「お、お母さん!? ちょっと、どうしたんですか!?」
あまりの取り乱し方に、私は慌てて美津さんの背にを伸ばした。急激なアレルギー発作か何かかとい、背をさすろうとした私のを、美津さんは狂気じみた力で激しく振り払った。
「触らないでッ!! あんた、正気なの!? なんてものを……なんてものを私にわせたのよ!!」
充血した瞳がカッと見かれ、額には青筋が太く浮きている。普段の穏やかな義母の面はどこにもなく、まるで獄の底からいしてきた怨霊のような形相だった。
「なんてものって……お母さんが持ってきてくださった卵で作ったプリンですよ!? 賞期限だって切れてないですし、体何が——」
「毒よッ!!」
美津さんは喉をかきむしり、よだれを垂らしながら切り声をげた。
「毒入りの卵よ!! あれには全部、私がしずつ農薬を混ぜて仕込んであったのよ!! それを……それを私がべるわけないでしょぉぉッ!!」
リビングの空気が、完全に凍りついた。
私のは、今放たれた言葉のを処理することを激しく拒絶していた。
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農薬。毒入り卵。それを、このは今、自分のから叫んだのだ。
「ど、く……? お母さん、今なんて……」
私のがガクガクと震え、声が掠れてない。
その、私の背に隠れるようにしてっていた凛が、私のエプロンの裾をさなできゅっと握りしめた。
「……ママ」
凛の消え入りそうな声が、に届いた。
「おばあちゃんね……凛たちを、みんななせようとしてたんだよ」
「え……? 凛、何言ってるの……?」
私がしゃがみ込んで娘の肩を掴むと、凛のきな瞳から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「あのね……凛、聞いちゃったの。先週、おばあちゃんが卵を玄関でママに渡したあと……」
娘のさな唇から語られたのは、像を絶するおぞましい真実だった。
先週、美津さんが卵を届けに来て、私が台所へお茶を取りにき、玄関に美津さんがになった瞬。たまたま廊の角からおばあちゃんにお礼を言おうとづいた凛は、美津さんが靴を履きながら、ひとりでにやにやと笑い、く呟いた言葉をはっきりと聞いてしまったのだという。
『ふふ……まさか卵に毒が混ぜてあるなんて、にもってないでしょうね。……ダーリンと、あの妻の遺伝子がわさった子どもなんて、この世から綺麗さっぱり消えちゃえばいいのよ』
凛は息を呑み、物で震えながらち尽くした。
美津さんの呟きは、さらに続いた。
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『あの女と私のするダーリンが肌をねた証拠がこの世にきてるなんて、考えるだけで虫唾がるわ。……全部消してやる。あいつも、そのガキも、全部まとめて獄へ送ってやるから』
美津さんのいう「ダーリン」とは、私の父のことだった。
父の妻——つまり私の実母に対する異常なまでの嫉妬。父と母のにまれた私、そしてその血を引く孫の凛。美津さんは、自分のする夫が過に別の女性と築いた「血の繋がり」そのものを激しく憎悪し、卵にしずつ毒を注射して私たちを病や衰に見せかけて抹殺しようと企んでいたのだ。
「……だから、凛……」
私は息が止まりそうになりながら、娘を抱きしめた。
「だから、卵を捨ててたの……?」
凛はこくこくと頷き、私の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「うん……。凛、ママとパパがんじゃったら絶対に嫌だったから……。だから、蔵庫からして、ゴミ箱の奥くに隠して捨ててたの……!」