"消えた卵の秘密" 第5話
作りプリンと突然の来訪
夕方く、キッチンには甘いバニラエッセンスとカラメルのばしい匂いがふんわりと漂っていた。
美津さんからもらった鮮な卵をたっぷり個使い、牛乳とお砂糖を混ぜて裏ごしし、じっくりと蒸し器で蒸しげた特製のカスタードプリン。荒を取ってから蔵庫でやしておいたガラスの器は、見事な黄に固まっていた。
「よし、完璧。これなら凛もんでくれるはず」
計の針が午半を回った頃、玄関のドアがガチャリとき、学から帰ってきた凛の元気な声が響いた。
「ただいまー!」
「おかえり、凛! 今はおやつに、凛のすっごく好きなものを作ってあるよ」
「えっ、なになに!?」
目を輝かせる娘を洗いにかせ、私は蔵庫から数分のプリンを取りし、リビングのテーブルへ並べた。
ちょうどそのだった。
ピンポーン、と甲いインターホンの音が鳴り響いた。
インターホンのモニターを確認すると、そこにはなんと、義母の美津さんがっていた。にはまたしても、見覚えのある養鶏の袋を提げている。
「あら……お母さん?」
私が玄関をけると、美津さんはし息を切らしながら、満面の笑みでがり込んできた。
「茜ちゃん、こんにちは! またくまで来たから、追加の卵を持ってきてあげたわよ!」
広告
「お母さん、こんなに頻繁に……本当にすみません、気を使っていただいて」
「いいのいいの! 族なんだから! ……それで、の卵はもうべたかしら?」
美津さんの目は、相変わらずどこか異様なを帯びて、こちらの反応をじっと見つめていた。
「あ、ちょうど良かったです! 今、いただいた卵で特製のプリンを作ったところなんですよ。お母さんもぜひ、べていかれませんか?」
「えっ……プリン?」
美津さんは瞬、きょとんとした顔をした、嬉しそうに目尻をげた。
「まあ、茜ちゃんの作りプリン! いただくわ、ぜひべさせてちょうだい!」
「どうぞどうぞ、リビングへがってください」
私は美津さんをリビングのソファーへと案内し、たい麦茶と緒に、スプーンを添えたプリンをテーブルへ置いた。
美津さんはテーブルのの黄のプリンを見て、実に嬉しそうにスプーンをに取った。
「美しそうねぇ。じゃあ、慮なくいただくわね」
たっぷりとスプーンですくい、ためらうことなくへと運ぶ。
「……んー! 美しい! とっても濃で、滑らかで……本当に美しいわ、茜ちゃん!」
「よかったです! お母さんからいただいた卵がすごく鮮だったから、とっても綺麗にできたんです」
美津さんはあっというに半分ほど平らげ、幸せそうに頬を緩めていた。
ちょうどそこへ、を洗い終えた凛がリビングへ入ってきた。
広告
「あ、おばあちゃん、来てるの?」
「あら、凛ちゃん、おかえりなさい! ほら、見てごらんなさい、ママが作ってくれたこのプリン、とっても美しいわよ! 凛ちゃんも緒にべましょう」
美津さんが招きすると、凛はテーブルののプリンと、それを美しそうにべる美津さんの姿を交互に見つめ、議そうに首をかしげた。
私は凛の肩に優しくを添え、微笑みながら言った。
「凛、プリン好きでしょ? これね、おばあちゃんが持ってきてくれた卵で作ったのよ。プリンってね、卵がたくさん入ってるんだから。これなら卵が嫌いでも、美しくべられるでしょ?」
私がそう言った瞬だった。
スプーンをに運ぼうとしていた美津さんのきが、ピタリと止まった。
内の空気が、まるで氷点に落ちたかのように張り詰める。
美津さんは見かれた目で、スプーンを持ったまま直していた。
「……え?」
掠れた声が、美津さんの喉から漏れた。
「い、今……なんて言ったの……?」
「え? だから、お母さんからもらった卵で作ったんですよ、このプリン」
私が議にいながらもう度繰り返した瞬、美津さんの顔から血の気がサーッと引き、陶器のように真っに染まりがっていった。
「う、嘘……でしょ……?」
ガチャン!
から滑り落ちたスプーンが、ガラスの器に当たって甲い音をてた。
美津さんは喉元を両で掻きむしるように押さえ、信じられないほどの絶叫をリビングに響かせたのだった。
「いやあぁぁぁぁッ!! なんてものを……なんてものをべさせたのよぉぉッ!!」