"消えた卵の秘密" 第4話
嘘の理由と優しいパパの直
「あ、あのね……凛、卵がだいきらいなの……!」
娘は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、絞りすようにそう叫んだ。
「卵が嫌い……?」
私はわず眉をひそめた。
「凛、卵焼きもオムライスも好きじゃない。お弁当に入れるといつも真っ先にべるでしょ?」
「ち、ちがうの! 急にきらいになったの! もう見たくもないくらい、嫌いになったの!」
凛は必に両を振って言い張った。
子どもの覚が変わることは珍しくない。昨まで好物だったものを急にべなくなることだってあるだろう。
けれど、だからといって親に隠れてゴミ箱に捨てるような真似をする子ではなかったはずだ。
「……凛。嫌いになったなら、『嫌いだからいらない』ってママに言えばいいだけでしょ? どうしておばあちゃんがくれたものを、こっそり捨てなきゃいけないの」
「うっ……うう……ごめんなさい……」
「べ物を粗末にしちゃいけないって、いつもパパとママから言われてるよね? 農のや、命をくれたき物にも失礼なんだよ」
私ができるだけ静かに、しかし諭すように言い聞かせると、凛はしゃくりげながら何度も頷いた。
「……うん……もう絶対にしない……。お願い、おばあちゃんには言わないで……!」
「言わないわよ。でも、もう度とこんなことしちゃダメ。約束できる?」
「……うん、約束する……」
娘は袖で涙を拭い、トボトボとリビングへ戻っていった。
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そのさな背を見送りながら、私はい溜息をついた。とりあえず理由は分かったけれど、何か釈然としないたい違が、胸の奥底に澱のように沈んでいた。
そのの夜。
仕事から帰宅した陽斗に、私は台所で夕飯の器を洗いながら、昼の来事を打ちけた。
「陽斗……ごめんね。卵のこと、ずっとあなたの仕業だって決めつけて疑っちゃって。本当に申し訳なかったわ」
々とをげる私に、陽斗は目をパチパチさせてから、いつものの良さそうな笑顔を浮かべた。
「なんだ、そんなことか! いいよいいよ、普段から俺が夜に々つまみいしてるのが悪いんだし、気にしないでくれよ」
「ありがとう……。でもね、まさか凛が捨ててたなんてわなくて。あんなことする子じゃなかったのに、何だかショックで……」
私が俯くと、陽斗は腕を組み、いつになく真剣な顔つきで顎にを当てた。
「なぁ、茜。……本当にそれだけかな?」
「え?」
「凛が『卵が嫌いになったから捨てた』って言ったんだろ? でもさ、あいつ、嫌いなピーマンだって『苦いからやだー!』ってそのでギャーギャー文句言うタイプじゃないか。親に隠れてこっそり捨てるなんて、そんな湿なやり方、凛の性格からして自然すぎるよ」
夫の言葉に、私はハッとした。
確かにその通りだった。凛は何事もをストレートにぶつけてくる子だ。
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嫌いなべ物があるなら、卓で堂々と嫌がればいいだけのこと。わざわざ親の目を盗んで、蔵庫から持ちしてまで処分する理由がない。
「学で何か嫌なことがあったり、言えない悩みを抱えてて、それがストレスになって変なにちゃってるとかさ……。何かに怯えてるんじゃないか?」
「何かに怯えてる……?」
陽斗の鋭い指摘に、私の背筋がスッと寒くなった。
もし娘が、親にも言えないな秘密を抱えているのだとしたら——。
翌朝、私は学へく準備をしている凛に、優しく声をかけてみた。
「凛、最学で嫌なこととか、困ってることない? お友達と喧嘩しちゃったとか」
「ん? ううん、学すっごく楽しいよ! 今もね、芽ちゃんと休みにブランコ乗る約束してるの!」
娘は満面の笑みでランドセルを背負い、元気に玄関をびしていった。そのるい表を見る限り、学活に問題を抱えているようにはとても見えなかった。
(じゃあ、やっぱり本当に卵が嫌いになっただけなのかな……)
私はキッチンへ戻り、蔵庫に残された美津さんの卵を見つめた。
(もしそうなら、形を変えてべさせてみたらどうだろう?)
卵そのものの形が嫌なら、お菓子に加してしまえばいい。凛の好物である作りのカスタードプリンを作って、蔵庫にやしておこう。
「これならきっと、美しくべてくれるはず」
そういった私は、ボウルを取りし、美津さんからもらった卵を割り始めた。
まさかそのプリンが、像を絶する悪の引きを引くことになるとは、このの私はにもっていなかった。