"消えた卵の秘密" 第1話
消えた卵といつもの容疑者
曜の朝、まだし肌寒いリビングには、トーストが焼けるばしい匂いが漂っていた。
私、茜(あかね)は代半の主婦。夫の陽斗(ハルト)、そして学になったばかりの娘・凛(りん)ので、郊の静かな宅で暮らしている。
朝ごはんの準備を終えようと、蔵庫の野菜からフライパンへ目を移しただった。
「あれ……? ちょっと、どういうこと?」
わず声がた。
蔵庫のドアポケットにある卵スタンドが、すっかり空っぽになっていたのだ。
そこには昨、実の父の再婚相である義理の母・美津さんから届いたばかりの、産直送の鮮な赤玉卵がワンパック——個きっちり入っていたはずだった。
「ねえ、陽斗! ちょっとこっち来て!」
リビングのソファで寝転がってスマートフォンをいじっていた夫が、首だけをひょこっと持ちげた。
「んー? 何、茜? もう朝ごはんできた?」
「朝ごはんじゃなくて! お義母さんから昨もらった卵、どこにったの? また全部でべちゃったわけ?」
陽斗は「げっ」という顔をしてね起き、慌てて両をパタパタと振った。
「ち、違う! 違うってば! 確かに俺はいしん坊だし、夜にお腹が空いて蔵庫を漁る癖はあるけどさ! いくらなんでも晩で卵個も丸呑みするようなヘビみたいな真似はしないって!」
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「でも、先週もらった卵もそうだったじゃない。気がついたらパックごと消えてたのよ? こので夜に台所をうろつくなんて、あなたしかいないでしょ」
「ほ、本当だって信じてくれよ! 昨べたのは……その、茜が事にとっておいた期限定のピスタチオアイスだけだって!」
「……は? あのアイス、私がずっと楽しみにしてたやつなんだけど!?」
わぬ自に私が仁王ちになると、陽斗はさくなって縮こまった。
「ごめん! つい魔が差して……! でも卵は本当に触ってない! 卵かけご飯すらべてないんだから!」
「もうらない。今のおやつに買っておいた苺のショートケーキ、陽斗の分は抜きだからね」
「ええっ!? そんな無茶苦茶な! 卵の濡れでケーキ没収なんてあんまりだよ〜!」
げさにを抱えて騒ぐ夫を見て、私は呆れてため息をついた。
その、寝からパジャマ姿の凛が目をこすりながらトコトコと歩いてきた。ランドセルを背負い始めたばかりのさな娘だ。
「ママ、パパ、おはよー……。なんか騒がしいよ?」
「あ、凛、おはよう。ごめんね、起こしちゃった? あのね、パパがおばあちゃんからもらった卵をまた全部でべちゃったみたいなの」
私が言うと、陽斗がすがりつくように娘のを握った。
「凛、助けてくれ! パパ本当にべてないんだ! 信じてくれよ〜!」
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いつもなら「パパ、悪したからごっつんこね!」と父親のをぽかんと叩くか、を尖らせて説教を始めるのが凛のお決まりのパターンだった。
しかし、今の凛はなぜか、線をスッとに落とした。
さな指をもじもじと絡めわせ、どこかぎこちない表で呟いた。
「……ふーん」
「え? ふーん、だけ?」
私が驚いて顔を覗き込むと、凛は無理に笑顔を作り、さく肩をすくめてみせた。
「え、えっとね……凛は優しいから、パパのこと許してあげるの。すっごく優しいお姉ちゃんだからね」
「凛ちゃん……! おってやつはなんていい子なんだ……!」
陽斗はしたように娘を抱きしめようとしたが、凛はどこかぎこちなくを引いた。
「……凛が卵をべたりしてないわよね?」
私が冗談半分で尋ねると、娘はピクッと肩を震わせ、すぐに力く首を振った。
「う、うん! べてないよ!」
「そうよね。じゃあ、やっぱり犯は陽斗ね。アイスの罰もあるし、ケーキはパパの分を半分こして凛とでべようね」
「やったー!」
娘は嬉しそうにねがった。けれど、その笑顔の奥に、どこか隠し事をしているようなさなが見えた気がして、私は胸の片隅にほんのしだけ引っかかるものをじていた。