"姑から受け継いだしゃもじ" 第11話
先にお呂へ
としがくなってから、のは静かになった。ふみは台所につたび、姑の声をいす。噌の量を指摘されたこと。漬物の切り方を教わったこと。盆踊りのに浴を貸してもらったこと。どれも、今では懐かしい記憶になっていた。
正は結婚し、ふみのところへ妻の麻を連れてきた。麻は代の終わりで、るく気さくな女性だったが、初めてに来たは緊張していた。ふみは、その様子を見て、自分の嫁入りのをいした。
夕飯のあと、麻は台所にち、器を洗おうとした。
「お義母さん、私も片づけます」
「ありがとう。でも、今は座っていていいよ」
「でも、何もしないのも落ち着かなくて」
ふみはし考えてから、布巾を枚渡した。
「じゃあ、これを緒に拭いてくれる?」
麻はほっとしたように笑った。ふみは、その笑顔を見て、昔の自分がどんな顔をしていたのかとった。姑のとしがどれほど気をつかっていたのか、今なら分かる。分かるからこそ、同じいをそのまま次のにさせたくなかった。
「お呂、先に入っていいよ」
「えっ、でもお義母さんが先で……」
「うちは好きな順で入っていいの。昔は決まっていたけど、今はもうそんなことしなくていいから」
麻は驚いたようにふみを見た。
「本当にいいんですか?」
「もちろん。
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疲れてるでしょう。慮しないで」
麻が呂へ向かうと、ふみは台所の棚をけた。としから受け取ったしゃもじが、いつもの所にある。持ちはすっかりがくなり、い使った跡が残っていた。
ふみはそれをに取り、麻へ渡そうかとった。けれど、今すぐ渡すのは違う気がした。しゃもじは、ただの具を受け継ぐものではない。のやり方を押しつけるためのものでもない。ふみは、もうしで暮らしてから、麻に聞いてみようとった。
「こののことで、やりにくいことがあったら言ってね」
呂からがってきた麻に、ふみはそう伝えた。
「ありがとうございます。私、まだ何も分からないので、いろいろ教えてください」
「分からなくて当たりだよ。私も最初は何も分からなかったから」
麻は、ほっとしたように肩の力を抜いた。
ふみは、台所の窓からを見た。夕方のが畑に残っている。としと緒にかきをしたも、こたつでテレビを見たも、この窓から同じ景を眺めていた。
嫁に来たばかりの頃、ふみは姑のことを怖いとっていた。としもまた、若い頃は自分の姑を怖がり、布団ので泣いていたという。そうしたを経て、はしずつ相の気持ちをり、族になっていった。
「お義母さん、今度緒に料理を教えてもらえますか」
麻が尋ねる。
「いいよ。まずは、あなたの好きなものから作ろう」
ふみは笑って答えた。覚えたを残すことと、昔の決まりをそのまま押しつけることは違う。ふみは、としから受け取ったしゃもじを棚に戻した。渡すが来たら、今度は自分の言葉で、麻に渡そうとった。