"姑から受け継いだしゃもじ" 第9話
族がをていく
昭が終わりにづく頃、のの顔ぶれはしずつ変わっていた。正は町の会社で庭を持ち、幸子も京で働き始めている。盆や正に子どもたちが帰ってくると、はだけにぎやかになるが、帰ったあとの静けさはよりきくじられた。
としは、孫たちが来ると、台所で腕を振るった。煮物や漬物、餅を用し、帰るときにはべ物を袋に詰めて持たせる。
「そんなに持って帰ったら、向こうでべきれないよ」
幸子が言うと、としはを止めずに答えた。
「持っていきな。都会じゃ、こういうのを作るもないだろう」
「ありがとう、おばあちゃん」
孫にそう呼ばれると、としの顔がほころぶ。ふみは、そんな姑を見ているのが好きだった。
方、としの体はしずつっていた。ちがるときにをつくようになり、畑へるもくなった。それでも、本は「を取っただけだ」と笑って、病院へくのを嫌がった。
「し息ががるなら、診てもらった方がいいですよ」
ふみが言うと、としは「げさだよ」と返す。
「お義母さんが倒れたら、みんな困ります」
「みんなって、あんたが困るんだろう」
「そうですよ。私が番困ります」
ふみが真顔で言うと、としは瞬驚き、それからさく笑った。
昭の、としは邪をこじらせて寝込んだ。
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最初は、休めば治るとっていたが、ががっても事がまない。ふみは病院へ連れていき、医師の話を聞いて、で休ませることにした。
夜になると、としは何度も目を覚ました。ふみは布団のそばに座り、様子を見た。昔は姑の音を聞くだけで緊張したのに、今は呼吸がし乱れるだけで配になる。
「ふみ、まだ起きてるのかい」
「はい。をみますか」
「丈夫。あんたも寝なさい」
「もうしそばにいます」
としは、枕元のさな箱を指さした。ふみがけると、にはあせた写真が入っていた。い着物を着た若い女性が、し緊張した顔で座っている。嫁入りしたのとしだった。
「お義母さんの写真ですか」
「そう。あのは、帰りたくて仕方なかったよ」
「私も、最初の頃は実に帰りたかったです」
「そうだろうね。あんたには、ずいぶんさせた」
ふみは写真を見つめた。写真ののとしは、ふみが嫁入りした頃と同じくらいの頃に見える。厳しい姑の姿しからなかった頃は、このにもな夜があったとはわなかった。
「あんたがこのに来てくれて、よかったよ」
としはそう言って、ふみのを握った。
「私も、お義母さんと暮らせてよかったです」
その返事を聞くと、としはしたように目を閉じた。ふみは握られたを包み、夜がけるまでそばにいた。