"姑から受け継いだしゃもじ" 第3話
さなテレビ
の暮れ、のラジオが京にい塔ができたと伝えた。京タワーという名を、ふみは初めて聞いた。針仕事のを止め、ラジオのに座ると、くの町に建った塔の話にを傾けた。
「いつか、見にけたらいいね」
がぽつりと言った。
「京まで、汽でくんですか?」
「そうだな。何もを空けることになるから、今は難しいけど」
その返事に、ふみは笑ってうなずいた。くへかけることは、のような話だった。農作業は待ってくれないし、にはとしやの兄弟もいる。嫁になったふみがいを空けるなど、考えたこともなかった。
翌の、のたちは農協の事務所に集まった。皇太子さまのご成婚をテレビで見るためだった。でテレビを持っているはなく、事務所に置かれた台のさな画面のへ、も子どもも押し寄せた。
画面のを馬がむ。ふみは、見える所を探して、ろからしだけ顔をした。映像はときどき乱れたが、誰も気にしない。華やかな装と、沿に集まる々の姿に、部のから何度も歓声ががった。
「こんなものがにあったら、毎見られるのにね」
としが言うと、くのが笑った。
「まだいよ。うちじゃとても買えない」
ふみは、テレビのの世界が自分たちの暮らしとはずいぶん違うことをじていた。
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それでも、らない所の様子を見られるのは楽しかった。画面に映るたちを眺めながら、いつかと京へくことがあるだろうかと考えた。
そのの、ふみはの奥の部で男を産んだ。の産婆が泊まり込んで伝ってくれた。まれたばかりの赤ん坊を抱くと、ふみの腕にさなみがのった。泣き声を聞いて、としは何度も「よかった」とにした。はしれたところで、落ち着かない様子でっていた。
「抱いてみる?」
ふみが声をかけると、は恐る恐る赤ん坊を受け取った。
「軽いな」
「赤ちゃんですから」
「ちゃんと育てなきゃな」
はそう言って、赤ん坊の顔をのぞき込んだ。ふみは、夫の表がし柔らかくなるのを見て、疲れた体の奥から温かいものが広がるのをじた。
男には正と名をつけた。夜泣きが続き、ふみは何度も起きて抱きげた。農作業に戻るときは、姑に赤ん坊を見てもらうこともあった。
「泣くのは元気な証拠だよ。あんたもべなきゃ倒れる」
としはそう言って、ふみに湯気のつ汁物をよそった。ふみはし驚いた。姑の言葉が、初めて配からているように聞こえたからだ。
昭には、女の幸子がまれた。はさらににぎやかになり、ふみはの子どもと畑仕事をき来する毎を送るようになった。