"姑から受け継いだしゃもじ" 第2話
朝半の台所
ふみの朝は、族の誰よりもく始まった。まだが暗い午半、布団からて、えたにをろす。かまどにを入れ、釜に米を入れて、族分の朝ご飯を炊く。の具を見ながら噌汁を作り、漬物を皿に並べる頃には、姑のとしが台所へやって来た。
「煮すぎるとが落ちるよ。をめて」
「はい」
「噌はそのくらい。うちは濃いが好きだからね」
としは台所の隅から、ふみの元を見ていた。ふみが何かを違えると、すぐに声がんでくる。鳴られるわけではなかったが、何をするにも姑の目が気になった。まれ育ったでは母と並んで料理をしていたのに、ここでは台所につだけでも緊張する。
朝のは、休むもなく畑へた。田植えの期になると、腰をかがめて苗を本ずつ植えていく。のにを取られ、膝やがたくなる。昼は田んぼの畦で、おにぎりと漬物をべた。としは際よくべて、すぐに作業へ戻る。ふみも遅れないよう、急いでに運んだ。
夫のは、ふみに必なことを教えてくれるだった。けれど、ののことは母に任せきりで、ふみが姑に何か言われても、横からをすことはほとんどなかった。
「母さんのやり方を覚えればいい。昔からずっと、そうしてきたんだ」
は悪気なくそう言う。
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ふみは、そのたびにうなずいた。夫の言うことが正しいのかどうか、自分にはまだ分からなかった。
呂に入る順番も決まっていた。最初はとし、その次に、子どもたち、最にふみ。湯がぬるくなっているもあったが、ふみは何も言わなかった。疲れた体を湯に沈めると、ようやくになれる。そのいだけは、実のことをいした。
それでも、楽しみがまったくないわけではなかった。のお盆には、の広で盆踊りがかれる。ふみは、としが若い頃に着ていた浴を借りた。し丈はかったが、染めた模様はきれいで、袖を通すだけで気持ちがるくなった。
は、ふみが髪を結うのを待ちながら言った。
「似うな」
ふみは驚き、鏡越しに夫を見た。がそんなことを言うのは初めてだった。
「ありがとうございます」
「母さんの浴だけどな。昔、母さんもそれを着て踊りにったらしい」
「そうなんですか」
は緒にの広へ向かった。太鼓の音にわせての輪がき、子どもたちの笑い声が聞こえる。ふみは、隣にいるの横顔を見た。見いのには気づかなかったが、夫は笑うとし目尻ががる。そのことをれただけで、ふみの胸はし軽くなった。