"五歳の母ちゃん" 第11話
しずつ戻る暮らし
リサと別れてから数、俺は仕事にても、ふと彼女の声をいした。
「ちゃんとべなさい」
「無理しちゃだめだよ」
「シンジは頑張ってるね」
言葉をい返すたびに、あの公園での別れが胸に浮かぶ。寂しさは消えなかった。けれど、母に会えたことを悔してはいない。あの子をリサに戻すことができたのだから。
楓はしばらく元気がなかった。保育園から帰ると、母の写真のに座り、何かを話している。俺は無理に聞かず、夕飯を作りながら見守った。
ある晩、楓が写真ので泣いているのを見つけた。
「どうした?」
「母ちゃんに会いたい」
俺は隣に座った。
「そうだな。俺も会いたいよ」
「リサちゃんが母ちゃんだったとき、すごく嬉しかった。でも、リサちゃんはリサちゃんだもんね」
「うん」
「母ちゃんは、もう戻ってこないんだね」
「そうだな」
楓はさく息を吸って、目をこすった。
「でも、母ちゃんのことは覚えてるよ。写真もあるし、お兄ちゃんもいるから」
俺は楓を抱きしめた。
「そうだ。母ちゃんのことを話していこう。俺が覚えてることも、しずつ教えるよ」
それから俺は、母のことを楓に話すようになった。母が作ってくれた卵焼きの。寝るに読んでくれた絵本。俺がをしたとき、夜までそばにいてくれたこと。細かな記憶は、話しているうちにしずつよみがえってきた。
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楓はその話を聞くたびに、「もっと聞きたい」とせがんだ。
「母ちゃん、もってくれた?」
「子守をってくれたよ。でも、俺はを覚えてないんだ」
「どんな?」
「こういうじだったかな」
俺は音程のれたをった。楓は笑いながら、母の写真を見た。
「お兄ちゃん、へた」
「うるさいな。母ちゃんは笑わなかったぞ」
「母ちゃんは優しいから」
「そうかもな」
そのは、で母のレシピノートを探した。台所の棚の奥に、古いノートが残っていた。母の字でかれたカレーや肉じゃがの作り方が並んでいる。俺は材料をそろえ、楓と緒に肉じゃがを作った。
しが濃くなりすぎたが、楓は「おいしい」と言ってべてくれた。
「母ちゃんのにい?」
「うん。でも、お兄ちゃんのだね」
その言葉に、俺は笑った。母の代わりにはなれない。でも、俺なりに楓と暮らしていけばいい。母がしてくれたことを、全部同じようにできなくてもいいのだ。
カフェのにも、しずつ頼れるようになった。シフトを調してもらい、楓の保育園の事にはなるべく顔をすことにした。美咲も、々夕飯のおかずを分けてくれる。
「シンジさん、よりに頼るようになりましたね」
「そうか?」
「うん。は何でもでやろうとしてました」
「そうしないと回らないとってたんだよ」
「今も変なのは変わらないけど、を貸してくれるはいますよ」
俺はうなずいた。母が言っていたことは、きっとこういうことなのだろう。