"五歳の母ちゃん" 第1話
歳の母ちゃん
「帰れ。できたぞ」
夕飯のあと、俺は妹の楓に頼まれていた作を机のに置いた。を切って、を塗って、折りで根をつけたさなだ。保育園で「おうちのと作ってきてください」と言われたらしい。
「わーい! お兄ちゃん、ありがとう」
楓は声を弾ませ、両でを受け取った。
「気に入ったか?」
「うん! これ、保育園に持っていくね」
「壊さないようにな。そろそろ寝るだぞ」
俺がそう言うと、楓は作を抱えたまま、仏壇のへっていった。そこには、両親の写真が並んでいる。父と母は、楓がまれてすぐに事故でくなった。楓はまだ赤ん坊だったから、両親の顔を覚えていない。
「母ちゃん、父ちゃん、今もってきます」
楓は写真に向かって、毎朝のようにそう話しかける。
母がいなくなってから、俺はを卒業して働き始めた。昼はスーパーの品しをして、夕方からは駅のカフェに入る。賃と活費を払い、楓の保育園の準備をして、事を作る。毎やることはかったが、楓のではなるべく音を吐かないようにしていた。
その夜も、カフェの閉作業にかけるになった。
「楓、戸締まりはしたからな。何かあったら隣の佐藤さんに話するんだぞ」
「うん。お兄ちゃん、く帰ってきてね」
「分かってる。先に寝てていいからな」
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楓は玄関までついてきて、俺の着の袖をつまんだ。さなをそっとすと、胸の奥がちくりとした。
「ごめんな。ひとりにして」
「丈夫だよ。お仕事がんばってね」
楓が笑うのを見届け、俺はをた。
カフェに着くと、がカウンターを拭いていた。
「お疲れ。楓ちゃん、元気か?」
「元気ですよ。最は保育園にも慣れてきたみたいで」
「それならよかった。無理して働きすぎなくていいんだぞ。楓ちゃんのそばにいてやんな」
「ありがとうございます。でも、働かないと活できませんから」
そう答えると、は何か言いたげにを閉じた。気遣ってくれているのは分かる。けれど、俺が休めばその分の収入は減る。現実は、優しい言葉だけではどうにもならなかった。
閉、同僚の美咲がコーヒーマシンを片付けながら、ぽつりと言った。
「楓ちゃん、最変なことを言うんですよ」
「変なこと?」
「この、保育園にお母さんが来たって」
俺はを止めた。
「母ちゃんはくなったって、楓もってるだろ」
「そうですよね。でも楓ちゃんは、『母ちゃんだよって言ってた』って。お母さんのこと、寂しくなっちゃったのかな」
「……そうかもしれないな」
笑って流そうとしたが、胸のにさな引っかかりが残った。
帰宅すると、楓はもう布団で眠っていた。枕元には、作ったばかりののが置いてある。
俺はその髪を撫で、写真のの母に目を向けた。
母ちゃんが、楓のに現れた。
そんな話を信じるつもりはなかった。それでも、その夜はなかなか眠れなかった。