"結婚式に来ないと怒鳴る義母→義父「もう会場にいるぞ?」" 第10話
婦の告と、暴かれた恩
『……はあ!? 誠さんが……!?』
義母の甲い声が、信じられないというように裏返りました。
『な、なんであの役たずのバカ嫁がヘアメイクをしてるのよ! 陸、あんた気でも狂ったの!? 男の嫁にそんなところで気を使わなくていいのよ!』
そのでした。 控の奥の姿見のから、ウェディングドレスにを包んだ婦のかな子さんが、静かに歩みてきました。
純のシルクドレスにを包み、繊細に編み込まれたシニヨンヘアには、憐なとパールがあしらわれていました。 どの角度から見ても息を呑むほど美しくえられた嫁姿。 かな子さんは私のスマホをそっと受け取ると、凛とした声でマイクに向かって話し始めました。
「お義母さん、違います。誠さんにヘアメイクをお願いしたのは、私のたっての希望です」
『……え? か、かな子さん……?』
「私、陸さんとお付きいするずっとから、誠さんのおに通っていたんです」
受話器の向こうで、義母が言葉を失ったのが分かりました。
「実は、陸さんとの結婚を決できたのも、誠さんのおかげなんです。 医師である陸さんとの規則な活や、将来のに押し潰されそうになっていたとき、誠さんがいつも温かく相談に乗ってくれて、背を押してくれたんです」
かな子さんは私の目を真っ直ぐに見つめ、優しく微笑みかけました。
広告
「私にとって、誠さんはただの美容師さんではありません。で番信頼できる、切なお姉さんです。 だから、私ので番切なのヘアメイクは、世界で番信頼している誠さんにお願いしたいと、最初から決めていたんです」
陸さんも力く頷きました。
「この式を選んだのも、持ち込みのヘアメイクを自由に頼めるプランがあったからなんだよ。 母さんが誠さんを見して嫌ばかり言っている、誠さんは僕たちのために、何週もからドレスにうスタイルを真剣に考えてくれていたんだ」
『そ、そんな……! かな子さんと誠さんが、最初からりいだったなんて……! 聞いてないわよ、そんなこと!』
義母の取り乱した叫びに、私は静かにをきました。
「お母さん。聞いていないのではなく、あなたが最初から聞くを持たなかったんですよ」
「曜にご実へ伺ったときも、かな子さんは私との関係を話そうとしていました。 けれどお母さんは、私の学歴や職業を嘲笑うことにで、かな子さんの言葉をすべて遮ったじゃありませんか」
私の静かな指摘に、受話器の向こうで息を呑む音が響きました。
「このの話でも、私は『かな子さんのヘアアレンジの仕込みで忙しい』とお伝えしました。 それをお母さんは、『自分の髪のことばかり考えてマナーもらないバカ嫁』と決めつけて、方に話をお切りになりましたよね」
広告
『う……っ……!』
義母の喉から、苦しげな呻き声が漏れました。
そこへ、部の扉がノックされ、式のキャプテンが顔を覗かせました。 「郎婦様、そろそろ挙式のおでございます」
「はい、今きます」 陸さんが凛とした声で答え、スマホをに取りました。
「母さん。もうだ。式は予定通り始めるから」
『ま、待って! 陸! 頼むから待ってぇぇ!』
受話器から響く義母の鳴を、陸さんは迷うことなく通話終ボタンを押して遮断しました。
ピッと無質な子音が鳴り、控に静寂が戻りました。 義父がく息を吐きし、私の肩をポンと優しく叩きました。
「誠さん、すまなかったね。……本当に、見事な仕がりだ。ありがとう」
「お義父さん、ありがとうございます」
チャペルの扉がき、パイプオルガンの厳かな音が響き渡りました。 ステンドグラスから差し込む陽を浴びて、陸さんとかな子さんがバージンロードを歩んでいきます。
婦の髪に揺れると、完璧にえられたヘアスタイル。 参列者からは、「なんて綺麗なお嫁さんなの」「本当に素敵」と、嘆のため息が漏れていました。
その温かな祝福の輪のに、息子のれ台を誇らしげに見守るはずだった義母の姿は、どこにもありませんでした。