みかん小説
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"出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届" 第9話

たい調と砕けた仮面

『玲奈、頼むからミューラー・アセットの融資を延してくれ! あとヶ……いや、ヶでいいんだ!』

話の直は、かつての傲な態度を完全にかなぐり捨て、みっともなく懇願してきた。

『このままじゃ、俺は会社にいられなくなる! 代表もろされたんだ! お、俺を破滅させる気かよ!?』

私は実の窓から見える夕暮れの空を見つめながら、静かに、氷のようにたい声で返した。

「破滅させたのは、あなた自よ。私はただ、契約通りに資を引きげただけ。それに、夫婦のを持ちして泣きつくに、自分が産目の妻に何をしたか、胸にを当ててよく考えてみたらどうなの」

『あれは……! あれは違うんだ! 俺はただ——』

「もう弁護士以とは話しません」

私は方に通話を切り、着信拒否に設定した。

それから数ヶのが流れ、季節はからへと移り変わっていた。

結は首が据わり、あやすと声をげて笑うようになっていた。私の体調もすっかり回復し、実での規則正しい活ので、にも平穏が戻りつつあった。

そして迎えた、庭裁判所での第回婚調の期。

調の終盤、双方の事実確認を確にするため、調委員のち会いのもとで同席面談のが設けられた。

数ヶぶりに机を挟んで対峙した直の姿に、私は瞬、息を呑んだ。

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かつて仕ての良いスーツを着こなし、自信に満ち溢れていた男の面はどこにもなかった。物のヨレたスーツを着て、背は丸まり、目のには消えない隈が張り付いている。頬はこけ、まるで歳も老け込んだかのようだった。

調委員が財産分与に関する確認事項を読みげる。

「申である妻側の特財産である億円の配当については、婚姻の株式を原資とする特財産であることが確に証されておりますので、財産分与の対象となります。また、婚姻期に形成された共財産については、法定通り折半とする内容でが形成されつつあります」

調委員の事務な説に、直は力なく頷くだけだった。もう反論する気力も、法な根拠も残っていなかった。

類の確認が段落した、直がふと顔をげ、私をじっと見つめてきた。

「……なぁ、玲奈」

「何でしょうか」

「……なんであの、病であんなにすぐ、容赦なく資を止められたんだ?」

直のからたのは、反省の言葉ではなく、いまだに胸の奥にくすぶっていたみ言だった。

「産で寝てないって言ってたのに……まるで最初から準備してたみたいに、即座に話して、カードも融資も全部引きげて。……たすぎるだろ。夫婦だったのに」

その言葉を聞いた瞬、私ので張り詰めていた何かが静かにれ、わず微かに吹きしてしまった。

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「……私が、たい?」

直は怪訝そうに眉をひそめた。

私は机のに両を置き、逃げを塞ぐように夫の目を真っ直ぐに見据えた。

「私はあの、産目だったのよ。以苦しんで、会の傷は激痛で、おきの授乳でもしていなかった。歩くことすらやっとの状態で、の結を抱いていたの。その私の目のに婚届と財産分与のを突きつけてきたのは、どこの誰だったかしら?」

直は息を呑み、線を落とした。

「あなたが帰った、私、声をして泣いたわよ。悔しくて、けなくて、痛くて、ボロボロ泣いたわ。……でもね、泣くことと、自分のを守ることは別の話よ。傷が痛くてが折れそうだからって、私と娘を裏切ったに、私の座のおを使わせ続ける理由にはならないでしょう?」

「俺は……そこまでおを追い詰めるつもりは……」

「いいえ、追い詰めるつもりだったのよ」

私は鞄のから、枚のプリントアウトを取りし、机の央に滑らせた。

直が義母に送った、あのメッセージの文面だった。

『産直なら玲奈も体力が落ちてるし、揉め事を引かせたくないから、提示した条件ですぐにサインするはずだ』

そのを見た瞬、直の顔が今度こそ完全に血の気を失った。

調委員のが、咎めるようなたい線を直に向ける。

「……お袋が、見せたのか」

「あなたが私を裏切ったから婚するんじゃない。私の財産を狙ったからでもない」

私は言言、魂を込めて宣告した。

「命がけで子供を産んで、で番痛くてっている妻の姿を、自分の利益のために利用しようとした。番守らなきゃいけない瞬に、番痛い所を狙って刃を突きててきた。……その浅ましい残酷さが、私にはどうしても許せないの」

直の目から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ち、机のに染みを作った。

「すまなかった……玲奈、本当にすまなかった……! 俺が違ってた! 代表もりて、もう見栄を張るようなことは何もしない! これからはからやり直すから……結のためにも、もう度だけチャンスをくれ……!」

両をわせて懇願する元夫の姿に、私のは微も揺らがなかった。

「結の父親として、これからは真面目にきてください。からそう願っています。……でも、私があなたの妻として隣に残り、それを見届ける必は、もうどこにもありません」

私の凛とした声が、たい調のに静かに響き渡った。

直は両で顔を覆い、子供のように声を殺して泣きじゃくった。

彼が自分のっぺらな計算によって真っ先に放してしまったものが、実はで最も得難い、かけがえのないものだったのだと——すべてを失った今になって、ようやく悟ったのだった。

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