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"出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届" 第4話

父の背と静かな避難

そのの午、私が連絡を入れた弁護士の川理恵さんが、病へ駆けつけてくれた。

理恵さんは母方の縁にあたる女性で、企業法務から事調まで幅広くこなす、非常に優秀で頼りになる弁護士だった。

ベッドサイドに子を引き、私が差しした婚届と財産分与の提案に目を通すと、理恵さんは呆れたように細いフレームの鏡を押しげた。

「……産目の病にこれを持ってくるなんて、性を疑いますね。玲奈さん、今すぐサインする必も、提に応じる義務も切ありませんからね」

「はい……。でも、億円の配当のことまでかれていて」

「そこが番の狙いだったんでしょうね。確認ですが、配当の元となった株式は、いつ取得されたものですか?」

「独代です。代半ばのに、父から贈与で譲り受けました。当の確定申告も贈与税の納付も、資産管理会社にすべて保管してあります」

「それなら完璧です」

理恵さんは帳にペンをらせながら、きっぱりと言い切った。

「結婚から所していた財産からじた配当は、民法の『特財産』とみなされます。婚姻に入されたからといって、自に夫婦の共財産として半分を渡さなければならない法根拠はどこにもありません。

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向こうの弁護士が何を言ってきたとしても、円も渡す必はありませんよ」

理恵さんの落ち着いた、論理な声を聞いているうちに、私の胸ので渦巻いていたが、しずつ形のある確信へと変わっていった。

「会社の融資の件も、佐伯さんから伺いました。未実分の止は契約まったく問題ありません。にならず、淡々と法な続きをめましょう。玲奈さんは今は、ご自の体とお子さんのことだけを考えてください」

理恵さんが帰ったあと、私は静かに目を閉じ、これからのことを考えた。

直と暮らしていた都のタワーマンションには、すでにベビーベッドも買い揃えてあり、退院はでそこで暮らすはずだった。

けれど、あんな男と同じ根のへ戻るわけにはいかない。産のり切った体で、いつまた当な求や暴言を浴びせられるか分からない環境に、まれたばかりの娘を連れてくことなど絶対にできなかった。

、退院のの朝。

私は迎えに来てくれた父の姿を見て、胸の奥がくなるのを必に堪えていた。

父・浦孝志、歳。代で会社を興し、数に経営の線を退いた父は、昔から数がなく、を表にすのがひどくなだった。

「おお、待たせたな」

父は病に入るなり、きなで私のいボストンバッグを軽々と持ちげた。

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「直君はどうした? 会社か?」

父の何気ない問いかけに、私は瞬だけ唇を噛み、さく嘘をついた。

「うん……急な張が入っちゃって。お父さん、ごめんね、迎えに来てもらって」

あの、直が病をびしていって以来、夫からの連絡は完全に途絶えていた。娘の退院だというのに、体調を気遣うメッセージつすら寄越さない。

本当のことを話せば、父が激して直の会社へ鳴り込みかねない。今はまだ、私自ので状況を理し、法な包囲網を固めるのが先決だった。

「そうか。まあ、赤ん坊が無事ならそれでいい」

父はそれ以く追及することなく、おくるみに包まれた結の顔を覗き込んだ。

ゴツゴツとした指先で、壊れ物を扱うようにそっと結のを撫でる。

「……さいな。壊れそうだ」

「丈夫よ。おっぱいむ力、結構いんだから」

私たちは産院をにし、父の運転するに乗り込んだ。向かった先は、直と暮らしていたマンションではなく、緑豊かな郊にある私の実だった。

窓を流れる見慣れた景を眺めながら、私はく息を吐きした。

実に着くと、階の客には真しい布団が枚、綺麗に敷かれていた。母がくなってから暮らしの父が、器用なりに掃除をかけ、干しして準備してくれたのだと分かった。

結を布団の真んに寝かせると、私の全からふっと力が抜け、そのに崩れ落ちるように座り込んだ。

「しばらく、お世話になるね」

「気にするな。部ならいくらでも余ってる」

父は台所へき、いほうじ茶を淹れて戻ってきた。湯呑みを畳に置くと、あぐらをかいて結をじっと見つめた。

「し横になれ。おきに起きなきゃならんのだろう。目ぇ閉じてるだけでも体は休まる。俺が見ててやるから」

「……ありがとう、お父さん」

器用な父の優しさに触れた瞬、喉の奥がツンと痛んだ。

最もっているに裏切られ、利用されようとしたけれど、ここには私と娘を無条件で守ってくれる所がある。

私は父の言葉に甘え、結の隣でそっと目を閉じた。

数分ほどの浅い眠りのあと、枕元に置いたスマートフォンのバイブレーションがく鳴った。

画面には、弁護士の理恵さんの名が表示されていた。

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