"出産3日目、1億円の入金直後に夫が離婚届" 第2話
い封筒と酷な計算
直は入れのき届いたスーツを着て、にはさな束と、名ベビーブランドの袋を提げていた。
、共通のの紹介でりって結婚した夫。爽やかな笑顔と物腰の柔らかさで周囲からの望もく、私の父も「し頼りないが、誠実そうな男だ」と結婚を認めてくれただった。
「玲奈、体調はどうだ?」
ベッドサイドの丸子に腰をろしながら、直は労わるような声をした。
「痛いよ。起きがるだけでも苦労だし……ほとんど寝てないの」
「そりゃそうだよな。産って命がけだって言うし」
直はコットのを覗き込み、眠っている結のさな顔を見つめた。
「いな」
その言葉には、どこかの子供を巻きに眺めているような、奇妙な距があった。指先本すら娘の頬に触れようとはせず、ただ品定めをするように数秒見ろしただけで、すぐに線をしたのだ。
胸のに微かな違がよぎったが、私は疲労のせいだろうと自分に言い聞かせた。
直は持っていたビジネスバッグのファスナーをけると、からみのあるい角封筒を取りした。
「玲奈。……ちょっと、事な話があるんだ」
直の顔から、先ほどまでの柔らかい表が消え失せていた。を押し殺したような、能面のようにたい目つきで私を見据えている。
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「何……?」
渡された封筒のをけ、を引きした瞬、私の呼吸が喉の奥で止まった。
番にあったのは、緑の枠線が印刷された——すでに直の署名と実印がくっきりと押された『婚届』だった。
指先が凍りついたようにかなくなった。
のが真っになり、自分が今、何をに持っているのかすら理解するのに何秒もかかった。
「……何、これ」
かすれた声が、喉から辛うじて漏れた。
「文字通りだよ。もう無理だ」
「何が無理なの……? 私たち、夫婦として何か問題があった……? いつからそんなこと考えてたの」
「かなりからだ」
直は眉つかさずに、淡々と言い放った。
「俺たち、すれ違ってばかりだっただろ。おはいつも実の会社の資産管理だ何だで忙しそうにしてたし、俺の仕事の変さなんてちっとも理解してくれなかった。もう夫婦としての関係はとっくにえ切ってたんだよ」
「そんなの……嘘よ。妊娠が分かった、あんなにんでくれたじゃない。『俺たちの宝物だ』って、涙ぐんで抱きしめてくれたじゃない!」
「あれは……そのの空気っていうか、親になるならそう振るうのが普通だろ」
吐き捨てるようなその言に、私の臓がたいでぎゅっと握りつぶされたような激痛がった。
隣のコットので、結がさくじろぎをした。
「……結はどうするの。
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親権は」
「俺は結を取りうつもりはないよ」直は平然とした顔で言った。「母親である玲奈が育てた方がいいに決まってる。養育費も、算定表の基準通りなら毎払うつもりだ」
「取りうつもりはない……? の自分の娘に向かって、よくそんなことが言えるわね……!」
りと絶望でがガタガタと震え、封筒からもう枚の類が滑り落ちた。
A4のコピー用に、几帳面なフォントで印字された『協議婚(案)』と題された文だった。
そこには、財産分与に関する詳細な条件が、項目ごとに並んでいた。
目を凝らしてその条文を追っていた私の線が、あるで完全に釘付けになった。
『1.本、妻の個座へ入された特別配当(億円)については、婚姻期に確定した実質共財産として清算の対象とし、夫・神直に対し、解決として千万円を速やかに支払うものとする』
さらに、そのの項目にはこうかれていた。
『2.妻が代表を務める資産管理会社(ミューラー・アセット)より、夫の経営する神ケアフーズ株式会社へわれている事業資融資について、契約期を最でもヶ、無条件で延・継続するものとする』
類を持つ指先から、血の気が完全に引いていくのが分かった。
今朝、過ぎに私の座へ振り込まれたばかりの億円。
そして、直が病へやってきたのは、その直のだった。
私はゆっくりと顔をげ、夫のたい瞳を真正面から見据えた。
「……直。あなた、今朝私の座に億円が入ったことを、ってたのね」