"午前3時、警察から「夫を迎えに」――私は独身なのに" 第5話
作業着の襟に刻まれた名
受話器の向こうで、息を呑む気配が伝わってきました。
『……条統括が、ですか? に認定がりた、あの彼が……』 「はい。先ほど湾岸警察署で保護され、現、湾岸央病院に収容されています」
私はに現状を伝えました。
「命に別条はありませんが、にわたり監禁され、過酷な虐待を受けていた痕跡があります」 佐々先は数秒の沈黙の、極めて鋭い声で返してきました。
『逮捕監禁致傷、あるいは殺未遂に匹敵する事件ですね』 「その通りです。蓮さんがきているとられれば、封じにく能性があります」
『分かりました。神堂グループ直轄の警備会社から、選抜した警護部隊を直ちに病院へ向かわせます。私もすぐに向かいます』 「よろしくお願いします、佐々先」
通話を切ると同に、私は本邸の警備へも連絡し、病院周辺の監体制を固めさせました。
その、処置の方からワゴンを押した護師が歩いてきました。 ワゴンには、透なビニール袋に入れられた蓮さんの作業着が載せられていました。
「神堂さん、患者様がにつけておられたです。警察の鑑識に引き渡すに、貴品が入っていないかご確認いただけますか」 「分かりました。見せていただきます」
私は袋を受け取り、ベンチので作業着を広げました。
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刺激のある化学薬品の匂いが、ツンと腔をつきました。
はボロボロで、油とが幾にも染み付いていました。 ポケットのには何も入っていませんでした。
しかし、作業着の首元を裏返した、私の線はある点に釘付けになりました。
襟の折り返しの部分に、黒い油性のインクで、さな文字がスタンプされていたのです。 と汗で滲んでいましたが、そこに記された社名が、はっきりと読めました。
――【剛田物産 千葉第製油】
その文字を目にした瞬、私の界が凍りつきました。
毎のように私の元へ束を送り、「君のしみを癒やすのは僕だ」と言い寄ってきていた男。 剛田達也の会社の名でした。
「……剛田……達也……」
私のから、たい呟きが漏れました。
すべてが、瞬でつながりました。 蓮さんを奪い、も暗に閉じ込めていた黒幕の正体。
私のしみにつけ込み、神堂グループの富を奪おうとしていたあの男こそが、蓮さんを獄へ突き落とした張本だったのです。
午を回り、病の側の窓がみ始めていました。 たいはいつのにかと変わり、の輪郭を濡らしていました。
集治療から厳な警備の敷かれた特別へと移された蓮さんは、静かに横たわっていました。 規則正しい体モニターの子音だけが、静まり返った内にさく響いていました。
点滴の管を見つめる蓮さんの首には、々しい傷跡が残っていました。 私はその痛ましい姿を胸に刻み、決して涙は見せないと誓いました。
ベッドの脇の子に腰かけ、元を見つめました。 私ののひらには、作業着の襟元から切り取った布切れがありました。
【剛田物産 千葉第製油】の印字が、くっきりと残っています。
あの男の傲な笑顔が脳裏に浮かび、胸の奥でたいりが静かに燃えがっていました。
その、シーツので蓮さんの指先がピクリときました。 乾いた喉からさな吐息が漏れ、閉ざされていた瞼がゆっくりと持ちがりました。
琥珀の瞳が焦点を結び、やがて私の姿をまっすぐに捉えました。
「……美桜……」
かすれた、しかし芯のある優しい声が、私の名を呼びました。