"正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算" 第8話
スピーカー越しの悪態
テーブルので鳴り響くスマホの画面には、『直子姉さん』の文字が表示されていた。
夫は度私と目をわせ、静かに息を吸い込んでから通話ボタンを押した。そして、迷うことなくスピーカーフォンに切り替え、スマホをテーブルの真んに置いた。
「もしもし」
『……秀? 今どこにいるの?』
受話器の向こうから聞こえてきた直子さんの声は、信じられないほど擦っていた。周囲に聞かれないよう、必に声を潜めているのが痛いほど伝わってくる。
「だけど。もう夕飯もべ終わったよ」
『う、嘘でしょ!? 本当に帰ったの!?』
「帰るって言っただろ。美代の席がないになんで俺がくんだよ」
『そんなこと言ってるじゃないのよ! 今すぐ赤坂に来て! お願いだから!』
夫は眉をひそめ、ややかに返した。
「なんで俺がかなきゃいけないんだよ」
沈黙が数秒続いた。スピーカーの向こうから、ガヤガヤとした親戚たちの話し声と、器がぶつかる音が聞こえてくる。
『……お会計がね、ちょっとくなっちゃって……』
「いくらなんだよ」
『……万』
「はあ!?」
夫がわず子から腰を浮かせた。私も息を呑んだ。万円。いくら級でみいしたとはいえ、たった晩の親戚の事代としてはあまりにも異常な額だった。
「なんで俺に話してくるんだよ。
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予約したのは直子姉ちゃんだろ。母さんとで払えよ」
『無理に決まってるでしょ、そんな! お母さんが秀に話しろって言ったのよ! 秀が払うことになってるんだからく来なさいって!』
夫の顎に、ギリッと青筋がった。
「俺はそんな約束、度もしてないぞ」
『何言ってんのよ! 毎秀がしてくれてたじゃない! 親戚ので払えないなんて言ったら、お母さんのメンツが丸潰れなのよ!』
直子さんは完全に半狂乱になっていた。自分が贅沢昧の注文をしておきながら、いざ請求を突きつけられると、弟に全てを押し付けようと泣き喚く。
その、話の向こうでガサガサと激しい物音がした。
『ちょっと貸しなさい!』
直子さんからスマホを奪い取ったのは、義母のさよ子さんだった。
襖をピシャリと閉める音がして、ざわめきがしのいた。義母は個をて、廊へ移したようだった。
『秀! いい加減にを張るのはおやめなさい! 親戚同を待たせてるのよ! 今すぐタクシーで来て支払いなさい!』
義母の甲い声が、静かながのリビングに響き渡った。
夫は拳を握り締め、腹の底から声を絞りした。
「なんで参加もしてない事のを、俺が払わなきゃいけないんだよ」
『当たりでしょう! あんたは本の男なのよ! 直子のところはこれから子どもの学費がかかるんだから、課になったあんたが払うのが筋でしょ!』
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「直子姉ちゃんのの都なんか、俺には関係ないだろ!」
『お父さんがきてたら、こんな恥ずかしい真似は絶対に許さなかったわよ!』
義母がき義父の名をした瞬、夫の瞳に鋭いが宿った。
「親父がきてたら、美代を台所に閉じ込めたりしなかったよ! 親父が母さんを座敷に座らせてたみたいに、ちゃんと美代を席に座らせてたはずだ!」
受話器の向こうが、瞬で凍りついたように静まり返った。
しかし、義母は反省するどころか、さらに醜悪な本音を剥きしにして叫んだのだ。
『……あのに、何か吹き込まれたのね?』
「何?」
『美代さんよ! あのがあんたを唆して、母親に逆らわせてるんでしょう! いい嫁なんてね、所詮はなのよ! 藤森のじゃないの! たまたまあんたと結婚しただけの余所者の顔を窺って、実の母親に恥をかかせる気!?』
私は元に置いていた布巾を、指くなるまでく握りしめた。
余所者。。
の正、朝から晩までたいで皿を洗い続け、写真の側に追いやられても笑顔で耐えてきた々のすべてが、その残酷な言で切り捨てられたのだ。
『あのの席なんて、最初から用するつもりなんてなかったわよ! あんたが稼いだは藤森ののよ! それを藤森のために使って何が悪いのよ!』
義母の狂気じみた叫び声に、私の喉から声がそうになった。
その、夫のきなが、私の震えるのにそっとねられた。
夫は私を見て、静かに首を横に振った。『俺がやるから』と、その目が言っていた。
夫はく息を吸い込み、スマホに向かって徹に告げた。
「母さん、もう回言うぞ。俺は円も払わない」
『……あっそう。なら、いいわよ』
義母の声が、気なほどく落ち着いたトーンに変わった。
『そこまで言うなら、親戚みんなので同じことを言ってみなさいよ。本の親戚同ので、男のおが恥を晒せるものならね!』
ドカドカと激しい音が響き、再び襖が乱暴にけ放たれた。