"正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算" 第5話
凍結した玄関と孤の靴音
「……嫁の分は予約してないって、どういうことだよ」
くをうような夫の声が、え切った玄関ホールに響いた。
義母は何がおかしいのかわからないといったに、馬鹿にしたような笑みを浮かべたまま答えた。
「どういうことも何もないでしょ。親戚入らずの集まりなんだから、美代さんだって気を遣うじゃない。お留守番してた方が、本にとっても気楽でいいのよ」
直子さんもブーツのファスナーをげ終え、当然の権利のように頷いた。
「そうよ、美代さんも気を遣いながらいお肉べるの嫌でしょ? 私たちは親切で言ってあげてるの」
親切。その言葉のあまりのグロテスクさに、私の喉の奥が引き攣った。
本のなど度も確認せず、勝に席から排除しておいて、「お留守番の方が楽でしょう」と善の皮を被せる。
それは、毎集写真を撮るに「嫁なんだからいいのよ」と笑いながら私をフレームのへ追いやっていたと、全く同じだった。
「何で予約を取ったんだ」
夫が靴を脱ぎ、ゆっくりと廊へがってきた。その瞳には、頃の穏やかさなど微も残っていなかった。
直子さんは眉をひそめ、苛ちを隠さずに答えた。
「よ」
「いつ数を決めた」
「……結構よ」
結構。直子さんが『予約取れた!』とメッセージを送ってきたのは、だった。
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あの点で、すでに——つまり、私だけを綺麗に削ぎ落とした数で個を押さえていたのだ。
千さんが「隣に座らせてね」と言ってくれたのは、その数だった。千さんさえ、私がされていることをらされていなかったのだ。
「秀、かないの?」
奥からコートを着ててきたさんが、異様な空気に気づいてを止めた。
「予約の数がいっぱいなんだってさ」
直子さんが適当にあしらうようにを振ると、夫は静かに、しかし廊の隅々まで響き渡る声で言った。
「じゃあ、俺もかない」
ピキリ、と玄関の空気が凍りついた。
義母の顔から貼り付いたような笑みが消えり、直子さんのがピタリと止まった。
「……は? 秀、何言ってんのよ」
義母が信じられないものを見るような目で夫を睨みつけた。
「妻をだけに置いていくような事会に、俺がくわけないだろう」
夫はそう吐き捨てると、台所の流しに残された、洗いかけの湯呑みを指差した。
「美代はさ、毎朝からこのの台所にってただろ。お茶を淹れて、皿を洗って、靴を揃えて……その美代の席だけがないって、体どういう神経してんだよ」
誰も、何も答えられなかった。
夫は私のからコートを優しく受け取ると、自分の腕にかけた。
「秀! たかが焼肉でを張らないでよ!」
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直子さんが声を荒らげる。「美代さんが留守番すれば丸く収まるでしょ!」
「たかが焼肉なら、美代がっても問題ないはずだろ。でも数がいっぱいなんだよな? じゃあ俺が抜ければちょうどいい。席空くんだから、にとっても好都だ」
「そ、そういうじゃないのよ!」
直子さんの声が、唐突に甲く裏返った。その瞳には、隠しきれない焦燥のが浮かんでいた。
なぜ、たったが欠席するだけで、これほどまでに取り乱すのか。数が減るだけなら、に言謝れば済む話のはずなのに。
義母が慌てて割って入った。
「秀! 今は本のお正なのよ! 美代さん、あなたからも言ってやりなさい! 夫を気持ちよく送りすのが嫁の務めでしょ!」
義母の目は血り、私を睨みつけていた。どこまでも私を「夫を操る悪者」に仕てげようとするその傲さ。
だが、夫は義母の言葉を完全に無し、私の肩を抱いた。
「美代、帰ろう。腹減ったろ。で何かおう」
「……えっ、でも、秀さん……」
「いいんだ。こう」
夫は私の靴をに揃え、迷うことなく玄関のドアをけた。
「秀! 待ちなさい! 秀!」
背で絶叫する義母と直子さんの声を置きりにし、私たちはたいのが吹き抜けるへと踏みした。
のでは、親戚たちが駅へ向かって歩きしていた。
健さんが振り返って「秀、先にってるぞー!」
とを振る。夫はち止まり、腹の底から声を張りげた。
「俺たちはかない! 帰るから!」
「……はあ!? なんでだよ!」
健さんの驚愕の叫び声を背に受けながら、私たちは駐へと向かった。
閉まりかけの玄関の奥から、義母が直子さんに言い放つヒステリックな声が漏れ聞こえてきた。
『放っておきなさい! どうせから泣きついて戻ってくるわよ!』
りしたの助席で、私は震える指先をぎゅっと握りしめていた。
直子さんが玄関でスマホを握りしめていた、あのく張った指先。
そして、半の廊で義母が夫に尋ねた「カードは持ってるわよね」という言。
パズルのピースが、恐ろしい絵を描きながらので繋がりかけていた。
赤坂の級個で、今夜、体何が起きようとしているのか。
私たちはまだ、その本当の獄の幕けをらなかった。