"正月の高級焼肉、嫁の席だけ外した義母の誤算" 第2話
膨らみ続ける集伝票
本の正には、もうつ、どうしてもに引っかかる問題があった。
おのことだ。
お義父さんがきていた頃は、正の宴会費用はすべて本が全額負担していたらしい。けれど、お義父さんがくなってからは、各庭で割り勘にする決まりになったと聞いていた。
私が嫁いだ最初のと目は、夫が義母に万円を包んで渡すだけで済んでいた。それが激変したのは、夫が勤め先の械メーカーで課に昇した、の正のことだった。
「うちの秀が課になったのよ!」
義母は夫の昇が決まったそののうちに、親戚に話をかけて自して回ったらしい。
そしてそのの正、座敷にの級寿司の桶がいくつも並んだところで、義母がわざとらしく親戚同のでパンパンとを叩いたのだ。
「皆さん、今はね、秀がめにしてくれるって言うのよ! あの子も課になってしっかり稼ぐようになったからねぇ!」
わあっと座敷から拍が湧き起こった。健さんのさな子どもたちまで、も分からずにさなを叩いている。雄叔父さんが「そいつはありがたい! 秀はさすが本の跡取りだな!」と夫の肩をバンバン叩いた。
夫は引きつった笑顔を浮かべたまま、慌てて義母の元にを寄せた。
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「ちょっと母さん、そんな話してないだろ……」 「いいじゃないの、に度なんだから。親戚ので恥をかかせないで頂戴」
義母は夫の顔も見ずに、ビール瓶を持って座敷の奥へとってしまった。親戚全員が見ているで宣言されてしまっては、断れば「本のメンツを潰すケチな息子」になってしまう。義母はそれを完全に計算したで、みんなので発表したのだ。
そのの宴会代は、寿司とお酒をわせて万円ほどだった。夫はで万円を財布からし、夕方に集に来た寿司に支払った。
台所で洗い物をしていた私のところへ、義姉の直子さんがお茶のおかわりを淹れに来た。
「秀も世したんだから、これくらいすのが当然よね。美代さんがケチケチをすことじゃないわよ」
直子さんはで笑い、私がお茶の葉を急須に入れるのを待たずに座敷へ戻っていった。
その帰り、私はを運転する夫に静かに切りした。
「ねえ、秀さん。来からはちゃんと決まりを作らない? 当いきなり言われて払うのはやめようよ。もってお義母さんから相談された額だけをすようにして、それ以はさないって約束にしてほしいの」
私は仕事柄、言った言わないのトラブルを嫌というほど見てきた。話本で数量や額を変えられ、荷が止まりかけた苦い経験から、どんなさな変更も必ずメールで文字に残す癖をつけていた。
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決めた額を事に決めて、それ以は払わない。それだけで、理尽な押し付けの半分は防げるはずだった。
夫はしばらく黙ってハンドルを握っていたが、やがてさく頷いた。
「そうだな……。美代の言う通りだ。当いきなり言われて断れないのは困るよな」
翌、夫は義母に話を入れ、「正の費用は、のうちにいくらかかるか決めて伝えてほしい」と約束を取り付けた。義母は話で「美代さんの差しでしょ」と嫌を言ったそうだが、応はそのルールに従う形になった。
しかし、求される額はを追うごとにねがっていった。
そのの暮れには、「お寿司のランクをつげたいから」と万円を求された。
翌の暮れには、「健のところの子どもたちもきくなって、よくべるようになったから」と万円に膨れがった。
私は計簿の端に、義母から指定された額を几帳面にき留めていた。
で、万、万、万。計で万円。
普通のサラリーマン庭にとって、決してさな額ではない。しかも、うちの計は夫婦それぞれの料をつの座にまとめ、そこから活費を捻していた。つまり、夫が親戚ので気よく払っているそのおには、私が毎満員に揺られて稼いできた料も半分含まれているのだ。
万円を支払った正の夕方、台所に湯呑みをげに来た千さんが、申し訳なさそうに声で囁いてくれた。
「美代ちゃん、毎おもも変でしょう……」
私が返事をしようとした瞬、座敷から義母の鋭い声がんできた。
「あら千さん、秀のおよ! 美代さんのおじゃないんだから、気にしなくていいのよ!」
義母にとって、私はどこまでっても「息子の稼ぎにぶらがっているだけの余計な」でしかなかった。
親戚たちが々に「さよ子さん、毎ごちそうになって悪いわね」「本はやっぱり羽振りがいいな」と謝を述べるたび、義母は満そうに目を細めていた。
「うちは息子がしっかりしてますから」
その笑顔の裏で、誰の料が削られ、誰が朝から度も座れずにたいで皿を洗い続けているのか。
そんなこと、親戚たちの界には最初から入っていなかったのだ。