"写真のない履歴書" 第9話
最初の定期便
昭261025、本航空の定期便が始まるが来た。招待とは違い、これからは決まった線をび、お客さまを乗せて運航する。私たちにとって、本当の仕事が始まるだった。
朝、私はいつもよりく目が覚めた。台所では母がおにぎりを握っている。今は特別なだね、と言うと、母はを止めずに「そうね。でも、いつも通りにやればいいよ」と答えた。私は包みを受け取り、玄関で父に見送られた。
羽田のに着くと、同期たちはもう集まっていた。制の襟をえ、髪を確かめう。誰かが「忘れ物はない?」と聞き、別のが持ち物をつずつ確認した。何度も練習した順なのに、本番だとうと落ち着かなかった。
搭乗のになり、私はタラップのそばにった。
「いらっしゃいませ。本は本航空をご利用いただき、ありがとうございます」
練習した言葉を、つずつ確かめるようににする。お客さまが席についたか確認し、ベルトの使い方を説する。内の準備が終わると、ドアが閉まった。
エンジンの音がまり、体がゆっくりきす。滑をり、やがてふわりと浮きがった。窓のの景がざかっていく。招待のときより緊張していた。今はお客さまを乗せて、決まった線をぶ。違いがあってはいけないとうほど、肩に力が入った。
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平に入ると、み物を配り始めた。座席のを歩き、ずつ声をかける。何か必なものはないか、具が悪そうなはいないか。お客さまの様子を見ながら、仕事をめた。
阪の伊丹に着くと、乗客の部がり、しいたちが乗ってきた。いで座席をえ、備品を確認する。同期たちは黙々といていたが、ときどき目がうとさくうなずいた。声にさなくても、互いに気にしているのが分かった。
再びびち、福岡の板付に着いたのは夕方くだった。お客さまがりるたび、私はをげた。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
最のがりると、内は静かになった。私は座席のにったまま、しばらくけなかった。は痛く、背には汗がにじんでいる。それでも、胸の奥には仕事をやり終えたという応えがあった。
「お疲れさま」
同期がを差ししてくれた。
「ありがとう」
で並んで座り、夕が差し込む窓のを眺めた。