"写真のない履歴書" 第1話
写真のない履歴
昭2682。座の通りは、昼を過ぎてもい差しに照らされていた。先には買い物客がき交い、面がくを通るたび、し遅れていが吹いてくる。私はその波を縫うように歩きながら、何度も腕計を見た。
には履歴がある。けれど、写真を貼る欄だけが空いていた。
松坂の写真部で撮してもらったのは、数のことだ。できあがるまで数かかると言われた。今が応募の締め切りだと気づいたときには、もう郵送ではにわない。
写真がないままして受け取ってもらえるのか、そもそも応募を受け付けてもらえるのか、考えても答えはなかった。
応募先は、本航空の創事務所だった。聞の片隅に、さく「エアガール募集」と載っていたのを見つけたのは、数のことだ。内でお客さまを迎える女性を採るらしい。今でいう客乗務員だが、当はそんな仕事が本にあることをるもなかった。
私も、に乗ったことはない。
ので何をするのか、誰に聞いてもよく分からなかった。
ただ、条件の欄にかれた料を見て、今ので働くよりに入れられるおが増えるかもしれないとった。それが応募したいとった番の理由だった。
私は座ので働いていた。
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朝はにを磨き、棚のほこりを払う。がけば、夕方までったまま接客をする。
客が途切れたときも、商品を並べ直したり、伝票を理したりして、座る暇はほとんどなかった。夜遅くに帰ると、母が事を残しておいてくれる。
料は計に入れ、元に残るのはわずかだった。
父は軍にいたことがあるが、戦争が終わってから仕事が定せず、計を支えられるほどの収入はなかった。母は内職をしていた。満州から引き揚げてきた兄は、妻と緒に実で暮らしている。族が増えた分、費もかかる。
借の返済も続き、母の嫁入り具まで放すことになった。
誰かが怠けているわけではない。族みんなが、それぞれできることをしていた。それでも、暮らしは楽にならなかった。料をもらうたび、いくらに入れれば末まで持つのか、母と緒に考えた。欲しいものを買うより、まずの支払いを済ませる。そんな毎が当たりになっていた。
事務所のまで来ると、私はを止めた。写真がない。応募する理由も、のためにしでもく稼ぎたいというだけだ。の仕事を自分にできるのかも分からない。
このまま帰れば、からまたにつ。そううと、履歴を持つに力が入った。私は息を吸い、扉をけた。