"夜勤明けに鍵を替えられた私" 第1話
昇した輩と休み続ける夫
夫の徹が帰ってくると、玄関できなため息をついた。靴を脱ぐ音まで乱暴で、私は台所から顔をした。
「何かあったの?」
「別に」
別に、という声がいつもよりい。私は夕飯のをめ、徹の顔を見た。彼はネクタイを緩めると、そのままソファに沈んだ。
「仕事で嫌なことでもあった?」
「俺じゃなくて、つの輩が課になった」
徹は同じ会社で営業を続けていた。ここ数、課を目指していると何度も聞いていたから、落ち込むのも無理はない。昇した輩は、徹が担当していたで、私も何度かに来た彼と事をしたことがある。
「すごいじゃない。その子、ずっと頑張ってたものね」
「俺が仕事を教えたんだぞ」
「徹が教えたから伸びたんでしょ。育て方がよかったんだよ」
「そういう慰めはいらない」
私は言葉に詰まった。徹の力を認めているつもりだった。でも、彼にはから目線に聞こえたのかもしれない。
結婚したばかりの頃、徹は仕事で失敗すると、私にだけ音を吐いた。私はそれを頼られているのだとい、何でも話を聞いた。だから今回も、しが経てば落ち着くとった。
その夜、徹は夕飯を半分残し、酒をんでく寝た。私は器を洗いながら、昇した輩の顔をい浮かべた。彼は徹を慕っていて、教わったことを素直に吸収していた。
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徹が指導したからこそ、ここまで来られたのも本当だろう。
けれど、教えた相が自分を追い越すことを、徹はどうしても受け入れられないようだった。
翌朝、徹は「今は会社を休む」と言った。が痛いらしい。私は体温計を渡したが、はなかった。
「し休めば気分も戻るよ。無理しないで」
そのの私は、まだ徹を支えるつもりでいた。
の休みで気持ちが切り替わるなら、それでいいとっていた。けれど、徹はそのも会社を休むようになった。最初は痛、次は胃の調、その次は「朝から気分が悪い」だった。
体調が本当に悪いもあるだろう。私は護師だから、本にしか分からないつらさがあることもっている。すぐに怠けていると決めつけたくはなかった。
ただ、徹は休んだも昼過ぎまでゲームをして、夕方になると酒をんだ。会社から話が来てもず、あとで「今さら何を聞くんだ」と文句を言う。最初のうちは、仕事の話を聞くだけで胸が痛むのだろうとっていたが、そんなが何週も続いた。
私は総病院で護師をしている。今の、護師になった。病棟のは刻で、夜勤の調やの相談に追われるが増えた。自分のが減ったのは確かだが、輩の成を見るのは嬉しかった。だから、徹が輩の昇をべない気持ちが、どうしても分からなかった。
「休むなら、会社にきちんと連絡してね」
「分かってる」
「引き継ぎのもいるんだから」
「俺に説教するなよ」
その言葉に、私は黙った。夫婦だから何でも言っていいわけではない。けれど、配して声をかけることまで説教と受け取られると、何を言えばいいのか分からなくなる。
休みが増えるにつれ、徹の仕事は同僚や輩が代わりにめていた。帰宅に会社の話をする徹は、周囲が自分を助けてくれたことには触れず、「俺がいなくても回るなら、俺なんて必ないんだろ」と言った。
「そんなことないよ。みんなで回してるんだよ」
「きれいごとだな」
私は、彼の言葉を受け止めようとした。でも、徹は私の言葉を聞こうとはしなかった。
半が過ぎた頃、徹の料ががった。彼は会社への満をぶつけるようになった。