"もやしと消えた仕送り" 第7話
自爆した被害者と親戚の笑
座を続ける久しをそのに残し、私は着替えを持って客のベッドへと移した。
「婚しましょう」
そのの夜、ドア越しに告げた私の言葉に、久しは取り乱して泣き叫んでいた。「考え直してくれ」「俺には里見しかいないんだ」と何もドアを叩き続けたが、私の決が揺らぐことはミリもなかった。
翌からの庭内別居が始まって目の昼休み、私のスマートフォンにわぬ物から着信が入った。
画面に表示されたのは、久しの従姉妹にあたる麻美さんの名だった。
麻美さんは私と同世代のWEBディレクターで、お盆の集まりで顔をわせた際にも、クリエイティブ職同士で気投し、たまにランチへくような気のれた仲だった。
「もしもし、里見さん? 仕事だった? ごめんね急に」
話の麻美さんの声は、どこか焦っているようだった。
「ううん、ちょうどお昼休みだから丈夫。どうしたの?」
「あのね……ちょっと信じられない話を聞いちゃって。これ、絶対に里見さんに伝えておかなきゃとって話したの」
麻美さんが語った内容は、私の予の斜めをくものだった。
なんとあの、義母の淑恵が親戚や所のに片っ端から話をかけ、「嫁に虐待されている」と泣きついて回っているというのだ。
広告
「叔母さん、うちの母にも話してきてね。『嫁に座のおを全部奪われた』とか『勝にカードを止められて活できない』って、ものすごい剣幕で喚いてたのよ。里見さんを完全な悪者にして、親戚から孤させようとしてるみたい」
私はわず苦笑してしまった。
あの義母ならそれくらいのは平気で使うだろうと予はしていたが、まさかここまで恥も聞もなくき回るとはっていなかった。
「そうなんだ……。親戚の皆さんは、私のこと鬼嫁だとってるよね」
私が自嘲気に言うと、麻美さんは話の向こうで吹きすように笑った。
「それがね、全く逆なのよ!」
「え?」
「叔母さん、話で興奮しすぎて、自分で墓穴を掘っちゃったのよ。『嫁の名義の座からおがろせなくなった』とか『嫁の族カードを取りげられた』って、自分からベラベラ喋っちゃってさ。うちの母も『ちょっと待って、それって里見さんのおじゃないの?』って突っ込んだらしいの」
さらに義母は、勢い余って「息子がを辞めて取り万しかないから、嫁の稼ぎを貰うのは当然でしょ!」とまで叫んでしまったらしい。
自の息子がすでにを辞めて無職同然になっていること、そしての稼ぎを勝に使い込んで豪遊していたことが、義母自のから親戚に筒抜けになってしまったのだ。
広告
「親戚、もう騒ぎよ。『淑恵さんは昔から見栄っ張りだったけど、まさか嫁のおを横領してたなんて』『息子の無職を隠して嫁を棒呼ばわりするなんて、として恥ずかしくないのか』って、みんな完全にドン引きしてる。里見さんの方はたくさんいるから、絶対に気に病まないでね」
麻美さんの温かい言葉に、張り詰めていた肩の力がふっと抜けていくのをじた。
悪を持ってを貶めようとしたが、自分の放った嘘と欲さによって自滅していく。因果応報とはまさにこのことだった。
「麻美さん、教えてくれてありがとう。本当に助かったわ」
「ううん。何か力になれることがあったらいつでも言ってね。あんな非常識なたちに負けちゃ駄目よ!」
通話を終えたあと、私はスマートフォンを見つめながらく息を吐いた。
親戚に恥を晒した義母は、今頃どんな顔をしているだろう。これでしはしくなるかとったが、欲に凝り固まったの執は、私の像を遥かに超えていた。
そのの夕方、私の携帯に義母から直接、着信が入った。
画面にるのも鬱陶しかったが、逃げていても埒がかない。通話ボタンを押すと、受話器の向こうから、りと屈辱で震える義母の擦れ声が響いた。
『……里見さん。次の曜、あなたのお母さんを連れて、うちの実に来なさい』
「母を? 母には何の関係もありませんが」
『いいから来なさい! 親同士でしっかり話しって、どっちが正しいか黒つけようじゃないの! 来ないなら、こっちから団に乗り込んでいくわよ!』
方にそれだけをまくしてると、義母は乱暴に話を切った。
実の母まで巻き込もうとするその卑劣さに、私の奥歯がギリリと音をてた。
けれど、いつまでも逃げ回るわけにはいかない。全てを清算し、完全に縁を断ち切るためには、この会を逃すはなかった。
私はを決して、団で暮らす母の話番号をタップした。