"もやしと消えた仕送り" 第5話
鬼の形相と狂乱の朝
翌朝、午。
リビングの遮カーテンの隙から、眩しい朝が差し込んでいた。昨夜みすぎた久しは、痛を訴えながら寝でまだのように眠っていた。
里見はダイニングテーブルで、めたブラックコーヒーを静かにに運んでいた。
その静寂を切り裂くように、けたたましいインターホンの連打音が鳴り響いた。
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!
それと同に、玄関のドアノブがガチャガチャと激しく回され、属の扉をドンドンと叩く鈍い音が響き渡った。
「けなさい! 里見さん! いるんでしょ! くけなさいよ!」
ドア越しに響くヒステリックな絶叫。義母の淑恵だった。
所迷惑になるのを避けるため、里見はちがり、静かに玄関の鍵をけた。
ドアがいた瞬、突のような勢いで義母が同然に踏み込んできた。派なスカーフを首に巻き、化粧を施した顔は、りで般若のように歪んでいた。
「ちょっと! どういうことなのよ!」
義母はリビングに入るなり、に握りしめていたプラスチックのカードと通帳を、ガラスのテーブルのに叩きつけた。
「今朝、デパートでお買い物をしようとしたら、カードが使えないって言われたのよ! 恥をかかされたわ! 慌ててATMにったら、今度は通帳からおも引きせないじゃない! 暗証番号が違いますって何なのよ! あんた、何か細したでしょ!?」
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テーブルのに放りされたのは、昨まで義母が自由に使っていたキャッシュカードと通帳だった。
里見は眉つかさず、氷のようにたい線を義母に向けた。
「その通帳とカードは、私たち夫婦の活費のためのものです。なぜお義母さんが持っているんですか?」
「はあ!? 何言ってんのよ! 息子が親にお遣いを渡して何が悪いのよ! 久しが『自由に使っていい』って渡してくれたのよ!」
義母は唾をばしながら、当然の権利だとばかりに喚き散らした。
その騒ぎを聞きつけて、寝のドアがき、寝癖だらけの久しが目をこすりながらてきた。
「……うわ、何だよ朝から。母さん? なんでうちに来て……」
久しの線が、テーブルのに散らばる通帳とカード、そしてえ切った表で佇む里見の姿を捉えた瞬、その顔からサーッと血の気が引いていった。
「あ、あら……久し、起きてきたのね」
里見はゆっくりと首を傾げ、夫に向かって微笑んでみせた。切のが宿っていない、底えのする笑みだった。
「ちょうどよかったわ。久し、お義母さんがね、うちの活費座からおがろせないって鳴り込んできたのよ。これ、どういうことか説してくれる?」
「あ……いや……それは……」
久しはをパクパクと閉させるだけで、声がない。額から脂汗がタラタラと流れ落ちていく。
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「あんた、久しを責めないでちょうだい!」義母が割って入る。「久しが懸命働いて稼いだおを、母親の私が使って何が悪いのよ! 嫁のくせに、息子の稼ぎを独り占めする気!? この棒猫!」
「棒?」
里見はフッとさくで笑った。
「棒はどちらですか。のおにを突っ込んで、座でフレンチをべ、ブランド品を買い漁っていたのはどなたでしたっけ?」
「なっ……!」
義母が息を呑んだ。
里見はテーブルのに歩み寄り、叩きつけられていた通帳をに取ると、表に印字された文字を義母の目のに突きつけた。
「よく見てください。この座の名義、誰になっていますか?」
そこには、はっきりと『モリタ サトミ』——里見個の氏名が印字されていた。
「この座のおは、すべて私がデザインの仕事で稼いだおです。久しの料なんて、円も入っていませんよ」
「……え?」
義母が呆然と声を漏らした。
里見は酷な笑みを浮かべたまま、キッチンのカウンターからあらかじめ用していた枚のをに取り、テーブルのへと滑らせた。
「お義母さん、これをごなかったようですね。久しの、直の与細です」
に印字された数字を見た瞬、義母の目がびさんばかりに見かれた。
『差引支額:62,400円』
名に勤めているはずの自の息子。その料袋にかれていたのは、目を疑うような額の数字だった。