"もやしと消えた仕送り" 第1話
えた卓ともやしの鉢
午のやわらかな差しが、郊の古い団の窓から差し込んでいた。
エレベーターのない階段を階までがり、息をえてからチャイムを鳴らすと、奥からパタパタとスリッパの音がづいてきた。
「はーい、どなたかしら」
「お母さん、私だよ。里見」
ガチャリとドアがくと、母のが目を丸くしてち尽くしていた。あせたカーディガンを羽織り、髪の混じった髪をろで無造作に束ねている。
「里見ちゃん? どうしたの急に。話もなしに珍しいじゃないの」
「仕事の打ちわせが急になくなっちゃってね。くまで来てたから、ちょっと顔を見ようとって」
「まあ、そうだったの。ちょうどよかったわ、散らかってるけどがって」
母は嬉しそうに目尻にしわを寄せ、来客用のスリッパをしてくれた。
玄関に靴を揃えてがり、狭い廊を抜けてリビングへ向かう。築を超える団のは、どこか懐かしいお線と古い畳の匂いが漂っていた。数に父がくなってから、母はずっとここで暮らしを続けている。
ふと、ダイニングテーブルのに目が留まった。さなお茶碗に半分ほど盛られたやご飯の横に、鉢がつ並んでいる。つはもやしのナムル、もうつはもやしと油揚げだけのい噌汁だった。
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ちょうどお昼ご飯をべていた途だったらしい。
「ご飯だったんだね。変なに来ちゃってごめん」
「いいのよ、ちょうどべ終わるところだったから。すぐにお茶を淹れるわね、座って待ってて」
母はそそくさと台所へ向かい、やかんをにかけた。
里見はパイプ子を引いて腰掛け、テーブルのの質素な事を見つめた。茶碗の底が見えそうなほどないご飯と、数円で買えるもやしだけの惣菜。
やがて母が、湯呑みとお皿に載せたおせんべいを持って戻ってきた。
「はい、どうぞ。おせんべいくらいしかなくて恥ずかしいんだけど」
そう言って笑う母の元を見て、里見はわず息を呑んだ。
指の関節が目ち、の甲の血管が青く浮きている。最に会った数ヶよりも、らかに回りさく、痩せ細って見えた。顔もどこか青く、頬の肉が落ちてしまっている。
「……お母さん。もやしも美しいけどさ、お肉とかお魚もちゃんとべなきゃ駄目だよ。体力が落ちちゃうよ」
配を隠しきれずにそう声をかけると、母は困ったように眉をげ、力なく笑った。
「丈夫よ。この歳になるとね、脂っこいものはあんまり受け付けなくなっちゃって。もやしはいし、お腹にも優しいからこれで分なのよ」
無理をして笑っているのはだった。
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父が遺してくれた保険があるとはいえ、母の収入は決してくない国民だけだ。暮らしで細い、しでも活費を切り詰めようと、毎爪にをともすような節約をしているのだろう。
だからこそ、里見は半に決したのだ。毎、自分の稼ぎから万円を母の座へ仕送りしよう、と。
都内でフリーランスのデザイナーとして独し、仕事も軌に乗って収入も定していた。夫の久しにも事に相談し、「里見のお母さんは僕にとっても族なんだから、んで支えよう」とく背を押してくれていたはずだった。
それなのに、なぜ母の活は向に楽になっていないのだろうか。
「ねえ、お母さん。もしかしてだけど……毎の仕送り、万じゃりない?」
里見は気遣いながら、できるだけやわらかい調で尋ねた。
しかし、母はぽかんとをけ、議そうに首をかしげたのだった。
「仕送り……? 万円って、何のことだい?」