"「中卒女に現場は無理」職人10人が辞めた結果" 第10話
冊目の帳としい朝
旬の澄み切ったれの。 千は社に呼ばれました。
社は机越しに千を温かい目で見つめ、枚の辞令を差ししました。
「堀千殿。事統括部に任命する」
千が息を呑むと、社は柔らかく微笑みました。
「肩きだけじゃない。これからは、うちの会社のすべての現の教育と采配を、君に託したい。港君のような若い職を、君ので育ててやってくれないか」
千は背筋をぴんと伸ばし、くをげました。 「はい。誠誠、務めさせていただきます」
数、介護施設の現に応援に来てくれたあの親方が、事務所を訪れました。 社が差ししたのは、を通して定した発注を約束する、専属協力会社としての業務提携契約でした。
「千ちゃんの現なら、いつだってんで駆けつけるぜ!」 話で笑っていたあの職が、真っ先に契約に判を押してくれました。
翌週の曜の朝礼。 社はしく再編成された職たちのにち、力く宣言しました。
「が社は今、学歴や性別、功序列で職を評価することは切しない。 評価の基準はただつ。具を慈しみ、帳面をえ、誠実に仕事と向きえるかどうかだ」
朝礼が終わった昼休み。 休憩所のベンチでは、港が作業のポケットから参考を取りして広げていました。
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表には『級建築施管理技士』の文字がありました。
「港君、勉してるの?」 千が声をかけると、港は照れくさそうに笑いました。
「はい! 来、第次検定を受けようとって。……堀さんから、次の現の副班を任されたんで、恥ずかしい仕事はできませんから」
そう語る港の胸ポケットにも、千と同じ、黒いさな帳が誇らしげに差してありました。
次の曜、千は久しぶりに、かつてのほどきをしてくれた親方の作業を訪ねました。 すっかり髪の増えた親方は、千が差しした冊目の帳を、分い指でおしそうにめくりました。
「聞いたぞ。抜けた現を、納期に戻りなしで納めたそうだな」 「親方の元で修した仲たちが、力を貸してくれたおかげです」
親方はフッとを鳴らし、ページをめくりました。 「具と帳面は、今でも毎えているか?」
「はい。も欠かさずに」
親方は目を細め、それ以は何も言わずに帳を千の元へ返しました。 その元に浮かんだわずかな笑みが、千には何よりの宝物でした。
がけた。 坂務に、業を卒業したばかりのの入社員が入ってきました。
初めての現からの帰り、軽トラックの助席で、は緊張した面持ちで千に尋ねました。
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「あの……堀統括って、本当に学をてすぐに職になられたんですか? それで、こんなきな現を全部仕切っているなんて、信じられなくて……」
千はバックミラーを見ながら、ふっと柔らかく微笑みました。 そして、作業着の胸ポケットの帳を、指先で軽くトントンと叩きました。
「そうだよ。最初はね、たくさん笑われたし、馬鹿にもされた」
千は助席の青に優しく語りかけました。
「学で学べなかったことはね、現で毎、この帳に教えてもらったの。 失敗したことも、使った材料の数も、全部このに残ってる。 今の現で分からなかったことも、に帰るにちゃんと帳にいておくといいよ」
は目を輝かせ、鞄から真しい帳を取りすと、最初のページに今の付を丁寧にき込みました。
そのひたむきな横顔に、千は歳のの自分をねていました。
胸ポケットの帳は、こので冊目に入りました。 千は今の付と、と回った現の寸法をき終えると、帳をパタンと閉じました。
夕暮れの現の扉をけると、そこには、仲たちのるい笑い声と、綺麗にえられた具たちが待っていました。