みかん小説
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"新婚初夜の裏切り" 第2話

父の遺言と空のカード

健太がていったあと、私はベッドから起きがり、昨夜の残像を振り払うようにく息を吸い込んだ。

計の針はまだ朝のをし回ったところだった。般なの窓がくまでは、まだくある。

支度をえた私は、エレベーターでホテルの最階にあるレストランへ向かった。昨の結婚式のために方から京し、同じホテルの別館に宿泊しているはずの父・昭が、窓際の席で、聞を広げながらコーヒーをんでいた。

「おはよう、お父さん」

「おう、美。いな」

父は聞を畳み、穏やかな顔で私を迎えてくれた。昨の結婚式で、純のウェディングドレスを着た私を腕に抱き、し照れくさそうに笑っていた父の顔が脳裏に蘇る。

「健太君はどうした? 部でまだ寝ているのか」

「ううん。弟さんの用事があるって言って、さっきかけていったわ」

「そうか」

父はそれ以何も追及せず、運ばれてきた茶のカップを私のへ押しやってくれた。相の踏み込まれたくない領域には決して無神経に踏み込まない――それが、実直に会社を経営してきた父の流儀だった。

湯気をてる茶を見つめながら、私はヶの週末、実の斎で父から渡されたあの茶封筒のことをいしていた。

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『おのしい座を作って、億円を入れた。嫁入り資だ』

突然の言葉に、私は目を丸くした。

『嫁入り資って……お父さん、今どきそんな言い方嫌だわ。だいたい億なんてすぎるよ』

そう言って困惑する私に、父はしだけ苦笑いを浮かべ、真面目な顔つきになって続けたのだ。

『俺も自分で言ってて古いとったよ。だがな、言葉のは逆だ。嫁ぎ先に差しすためのじゃない。結婚しても、おが自分のでっていられるためのだ。誰かの顔を窺ってしなきゃいけないような、おが自分を守るための盾なんだよ』

父が用してくれた類は、税理士の確認がきちんと済んだ、正式な贈与の契約だった。受贈者の欄には、私の名だけが単独で記されていた。

『健太君の名は入れないの?』と尋ねた私に、父は首を横に振った。

『夫婦にやるじゃないからな。お個の財産だ。もし使いに迷うなら、をつけるな。おが使いたいとわないなら、円もかさなくていい』

、私はそのカードのことを健太にも正直に話した。これから夫婦になる相に、隠し事をしたくなかったからだ。

『お父さんから、万がののための資として預かったの。でも、まだ何に使うかは決めてないわ』

その、健太はし驚いたように目を丸くし、それから『すごいな、美のお父さん。

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でも、それは美のおだから、美が事に持っておきなよ』と優しく言ってくれた。

あのの健太の言葉に、私は嘘はなかったと信じたかった。このとなら、対等でお互いを尊しえる庭が築けると、からっていたのだ。

けれど、結婚式の取りがづくにつれて、健太の周辺からしずつ穏な空気が漂い始めた。

健太の弟である亮太には、妊娠の妻・がいた。は狭な賃貸アパートにんでいて、もうすぐまれる子どものために広い軒を探していた。

ある週末、義実での事の席で、亮太が冗談めかして言ったのだ。

『兄貴、義姉さんのあの億円から、ちょっとだけカンパしてもらえないかな? そしたら俺たち、駅のいいが買えるんだけど』

私は笑わずに『それは私のおだから、せないよ』とはっきり答えた。しかし、横にいた健太は曖昧に笑いながら『まあ、族だから助けえるところは助けいたいよな』と濁したのだ。

義母の幸子もまた、見るような声でこう言った。

『亮太たちの赤ちゃんがまれるに、あの千百万円の建売宅にめたら最よねぇ。健太、お兄ちゃんなんだから、何とかならないの?』

健太は何も言わなかった。

そして数週、私は夜遅くに健太がベランダで話をしている声をにしてしまった。

『……丈夫だって、母さん。結婚して籍を入れたなら、美だって族のこと無にはできないから。俺がうまくやっておくよ』

あのの嫌な胸騒ぎは、違いではなかったのだ。

私はすぐにへき、億円の全額を、私名義のまったく別の座へと移し替えた。期運用と活防のために資を分散させ、父から渡された古い座には、残としてわずか数千円だけを残しておいた。

そして、その空になった古いキャッシュカードだけを、元の類袋に入れてバッグに戻しておいたのだ。

夫を試すような真似をしてしまった自分に、当は罪悪があった。だが、父の『嫌だと言える状態を、先に守っておけ』という言葉が、私の背を押していた。

健太は今、その空っぽのカードを事に抱えて、弟のの決済現へ向かっている。

元のスマートフォンが、テーブルのでく震えた。

画面を見ると、局番から始まる見らぬ固定話の番号が表示されていた。

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