"夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転" 第12話
テーブルに叩きつけられた婚届
叩きつけられた封筒のから滑りたのは、達也の自署名と捺印が済まされた、枚の緑の婚届でした。 それだけではありませんでした。
婚届の真から、もう枚の分い類が姿を現しました。 表題には、太いゴシック体でこう印刷されていました。
『財産分与及び産所権譲渡』
私が線を落とすと、達也はを乗りし、唾をばしながらまくしてました。
「専務取締役に昇したこの俺に、おみたいなで取り柄のない女は吊りわないんだよ!」
酷な言葉が、次々と浴びせられます。
「持参も持ってこなかった貧乏育ちのおを、これまで養ってやっただけでも謝しろ。だが俺も鬼じゃない。切れ代わりに、婚の面倒をしは見てやってもいいとっていた」
達也はの用を、差し指でバンバンとく叩きました。
「だがな、条件がある。この敷百坪、億円の豪邸と、おの名義にある預億円の全額を、俺と麗華へ財産分与として差しせ」
平然と言い放たれた言葉に、私は眉ひとつかさずに夫を見つめ返しました。
「婚姻期に築いた夫婦の共財産として、俺がすべてを買い取ってやるという筋きだ。おは着の着のままで、今すぐ私物だけをまとめてこのからてけ」
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達也は自らの専務という権力を盾に、力づくで脅迫してきました。
「拒否するなら、うちの会社の顧問弁護士を総員して、おを徹底に社会に破滅させてやるぞ!」
夫の言葉に呼応するように、麗華が歩へ踏みてきました。 彼女はお腹を両でおしそうに包み込み、勝ち誇った笑みを私に向けました。
「見ての通り、私のお腹には達也さんの跡継ぎの赤ちゃんがいるの♡」
麗華は嘲笑うように元を歪めました。
「専務取締役の奥様にふさわしいのは、若くて華やかなこの私よ。あんたみたいなで増の女が、達也さんの隣に並べるわけないでしょう? 赤ちゃんと私のしい活のために、このお敷を気持ちよくけ渡しなさいな」
義母のも扇子をピシャリと閉じ、テーブルをバンと激しく叩いて笑いしました。
「おほほ! の程をりなさい、美桜さん!」
義母は障りな声を響かせ、私を指差して罵倒しました。
「流企業の役員になった達也に、あんたのような貧乏嫁は最初から釣りわなかったのよ! さっさとに実印を押して、今すぐここからてきなさい!」
達也もを乗りし、私の顔のに級万を突きつけて鳴り散らしました。
「聞いた通りだ! 今すぐここに署名と捺印をしろ! グズグズして俺たちの貴なを奪うなら、ぐるみ剥いで叩きしてやるぞ!」
の醜い欲望と傲さが、リビングのに渦巻いていました。
けれど、私のには恐怖も、揺も、しみの涙も、滴たりとも湧いてきませんでした。 私の脳裏に蘇っていたのは、ヶの父のあの言葉だけでした。
――というものは、の丈にわない権力をに入れた瞬、の奥底に眠るもっとも醜い本性をむきしにする。
お父様。 あなたは、この男たちが専務の位に酔いしれ、を引き連れて奪に現れる結末を、完全に予見していたのですね。
私は震えることのない静かなで、テーブルののをそっと指先で引き寄せました。