"夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転" 第7話
ゴミ箱のの破片
それから数の曜の朝のことでした。 午過ぎ、玄関のインターホンが静かに鳴りました。
郵便局の配達員が差ししたのは、達也宛ての特定記録郵便でした。 差の欄には、港区内にある名なレディースクリニックの名称が印字されていました。
私が受領印を押し、リビングへ戻ろうとしたときです。
階段をりてきた達也が、私の元にある封筒に目を止めました。 その瞬、夫の顔から血の気がサーッと引いていきました。
「おい! それをどこでに入れた!」
普段の横柄な態度とは違い、らかな焦りを浮かべながら駆け寄ってきました。 そして、私のからひったくるように封筒を奪い取ったのです。
「郵便局の方が届けてくださった親展のおですよ」
「俺宛ての郵便物を勝に触るなと言ってるだろうが! の郵便物をジロジロ見て品定めするんじゃない!」
達也は封筒をポケットへ無理やり押し込み、肩で激しい息を吐きました。 これまで見たこともない取り乱しように、私はただならぬ気さを覚えました。
達也は吐き捨てるように背を向けると、階の斎へと駆けがっていきました。 カチリと、内側から鍵をかけるい音が階まで響いてきました。
それからほど経ったころ、斎のドアが乱暴にく音がしました。
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階段を駆けりてきた達也は、スーツを着込んでいました。
「急な役員会議が入ったからかける。帰りは夜になる」
達也は私と目をわせようともせず、靴を履くとびしていきました。 ガレージからのエンジン音が響き、慌ただしくざかっていきます。
私は静まり返ったので、階の斎へと向かいました。 ドアノブにをかけると、鍵はかかっていませんでした。 転していた夫は、施錠することすら忘れていたのです。
暗い部の、机の脇に置かれた黒い革張りのゴミ箱に、私の線が吸い寄せられました。
そこには、無残に細かく引き裂かれたい片が散らばっていました。 先ほど届いた、あのクリニックの封筒の便箋と同じ質でした。
私はビニール袋をはめ、ゴミ箱から片を枚残らず拾い集めました。 破片の数はおよそ片。
斎の広いデスクのに黒いフェルトを広げ、ピンセットで慎に並べ替えていきました。 破断面の形状と、印刷された罫線を照らしわせながら、パズルを解くように繋ぎわせていきます。
分ほどの作業の、引き裂かれていた枚の類が完全に復元されました。
それは、港区の産婦科クリニックが発した、正式な受診控えでした。 部には、患者名として『麗華』という代とおぼしき女性の名がありました。
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そして、診断結果の欄には、鮮な文字が印字されていました。
『妊娠ヶ』
さらに私の目を釘付けにしたのは、緊急連絡先と配偶者欄の署名でした。 そこには、見慣れた夫の乱暴な跡で、『郷田達也』という名が堂々と記入されていたのです。
続柄の欄には『夫』。 夫の個用携帯の番号まで、丁寧に添えられていました。
すべてが、氷のような事実として目のに突きつけられました。
達也が急激に私を見し、追いそうとしていた本当の理由。 それは単なる世の傲さではなく、完全に計画された裏切りでした。
夫は若いを囲い、子どもを妊娠させていたのです。 そして専務というたな位を盾に私を追いし、をこの豪邸に迎え入れようとしていたのでした。
その瞬、私の胸のにあった夫へのは、音をてて完全に消えりました。 涙など滴もてきませんでした。 残ったのは、研ぎ澄まされた徹な覚悟だけでした。
――はの丈にわない権力をに入れた瞬、の奥底の最も醜い本性をむきしにする。
父の言葉が、鳴のように脳裏を貫きました。 父は、夫が面でめていたこの卑劣な企みまでも、すべて見抜いていたのです。
私はスマホを取りし、復元された受診控えを何枚も撮しました。 麗華という名、妊娠ヶの診断、そして夫自の自署名。
すべての証拠を暗号化フォルダへ保すると、片を透なファイルへと丁寧に収めました。
決戦のは、確実にづいていました。