"夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転" 第6話
ダッシュボードの黒いファイル
曜の午、達也から私のスマホへ本の話が入りました。
『おい美桜、のに事な類入れを忘れてきた』
受話器の向こうから、嫌そうな夫の声が響きました。
『助席のダッシュボードをけて、黒い革のケースを持って会社まで届けろ。急ぎだ』
達也は方に用件だけを告げると、こちらの返事も待たずに話を切りました。 私はガレージへり、夫のセダンの助席ドアをけました。
内には、あの甘ったるいの匂いが微かに残っていました。
ダッシュボードをけると、目当ての黒い革ケースはすぐに見つかりました。 それをに取った瞬、奥の隙に何かが押し込まれているのが見えました。
私は胸騒ぎを覚え、その類の束をそっと引きしました。
枚目は、港区の等に建つ超級タワーマンションのパンフレットでした。 最階のペントハウスの部番号に、赤いペンでぐるりと丸印がつけられています。
そして、パンフレットのに挟まれていたのは、枚のルーズリーフでした。 広げてみると、そこには夫の乱暴な跡で、資の流れがき殴られていたのです。
『発企画費名目』 『1012 5,000万円送』 『115 8,000万円送』 『1120 1億2,000万円送』
並んでいるのは、億単位の途方もない数字でした。
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さらに段には、座から個座への還流ルートを示す矢印まで丁寧にかれていました。
正規の経理処理とはえない、らかな裏のメモでした。 夫の役員報酬だけで、超級マンションが買えるはずなどありません。
(達也さん……会社の発資にをつけているの……?)
たい緊張が、指先から背筋へと駆けがっていきました。
夫は自社の資を正に引きし、莫なをプールしている。 私はスマホを取りし、ルーズリーフのメモとパンフレットを余すところなく撮しました。 撮を終えると、すべての類をもとの隙へ慎に戻しました。
郷田物産の本社ビルへ到着した私は、受付で秘に革ケースを預けました。 ロビーをにしようとした、そのでした。
「美桜様……お久しぶりでございます」
振り返ると、経理部の古参役員である松崎さんがっていました。 私の実が会社を支援した際、実務を担当してくれた信頼できる方でした。
「松崎さん、ご無汰しております」
松崎さんは周囲を気にしながら、声を潜めて言いました。
「しだけ、おに入れたいことがございまして……」
私たちは通りのないラウンジへ移しました。
「実は、達也様の専務就任が決まってから、資管理に異変が起きております」
松崎さんの表には、い警戒のが浮かんでいました。
「達也様は発事業の特別予算について、ご自単独の専決事項にされました。通常の経理監査を通さない特別ルートを作られたのです。すでに数億円の予算が、使途のまま流しておりまして……」
その言葉を聞いた瞬、内で見たあのメモの数字が、本の線でつながりました。
「教えてくださり、ありがとうございます。松崎さんも、どうかお気をつけて」
自宅へ戻った私は、帳にたな事実をき加えました。 夫は役員の権力を悪用し、会社のを横領して破滅へのを突きんでいる。 疑惑は、完全な確信へと変わっていました。