"夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転" 第5話
夜のジャケットと枚の片
専務への就任が内定してから週が過ぎたころ、達也の活は目に見えて荒れていきました。 連のように午様や朝帰りを繰り返し、酒の匂いをプンプンさせて帰宅するようになったのです。
勤のわずかなでも、私に対する態度はにに横柄さを増していました。
「おい美桜、今朝の噌汁は汁がいぞ。もっと級な昆布や鰹節を使えないのか?」
卓についた達也は、お椀を乱暴に置くと嫌そうに眉をひそめました。
「毎朝同じように、丁寧に取っておりますが……」
「貧乏の舌で作るからっぽいになるんだよ。俺は来から専務なんだぞ。流の男がにするものにふさわしい質というものがあるだろうが」
箸を投げすように置き、スマホを睨みつける達也。 には脱ぎ捨てられた昨夜のシャツが放置され、玄関には級な革靴が乱雑に転がっていました。
私がそれらを黙って片付けようとすると、背からたい声がんできました。
「おは政婦としてここに置いてもらっているようなもんなんだから、部の隅々まで磨きげておけよ。文なしの女を養ってやってる俺の慈に謝しろ」
夫婦としての温もりなど、最初からなかったかのような暴言でした。 夜になると、達也はベランダにて、誰かと声で甘ったるい話をしていました。
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仕事の打ちわせとはえない、ふざけうような笑い声が夜に乗って聞こえてきます。 私は問い詰めることもせず、ただ静かに夫の異変を見つめ続けていました。
そして、曜の夜を回ったころでした。
ドタン、と玄関のい防音扉がきな音をててきました。 私はリビングのかりをつけたまま、玄関へ向かいました。
そこにっていたのは、元をふらつかせ、壁に寄りかかっている達也でした。 顔は赤黒く気し、体全体から烈なアルコールの匂いがち込めていました。
「達也さん、丈夫ですか?」
「うるさい……くを寄こせ!」
靴を脱ぎ散らかしたままリビングへがり込み、ソファへ倒れ込むように体を投げします。 急いでたいを持っていくと、達也はグラスをひったくるように奪い、気にみ干しました。
「ふん、気の利かない女だ」
それだけ悪態をつくと、達也はいびきをかいて眠り込んでしまいました。 完全に酔していて、揺すっても起きそうにありません。
私はに落ちていた達也のスーツの着を拾いげました。 その瞬でした。
お酒の匂いに混ざって、濃で甘いのりがをついたのです。 私の使っている化粧品とはまったく違う、舶来の級の匂いでした。 着の襟元に、べったりと濃密に染みついていました。
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私は着をハンガーに掛けようとしました。 そのとき、内ポケットのあたりに、いの触が指先に触れたのです。
胸騒ぎを覚えながら、私はポケットの内側へそっと指を滑り込ませました。
引きされたのは、丁寧につ折りにされた細い領収でした。 蛍灯のかりのでいた瞬、私は息を呑みました。
発元は、座の並通りにある最級ジュエリーブランドでした。 付は昨の午。達也が回りと言ってかけていた帯です。
そして、品名と額の欄を見た瞬、私の臓が激しくねがりました。
『ダイヤモンド・ペンダントネックレス お支払総額:2,800,000円』
百万円というが、括で支払われていたのです。 当然ながら、そんな価なプレゼントを私が夫から受け取った覚えなど、度もありませんでした。
襟元に残る濃なの匂い。 そして、平の昼に買われた百万円のジュエリー。
達也はに女を囲い、の丈にわない貢ぎ物をしている。 それは単なる浮気などではなく、もっと根い、計画な裏切りでした。
私はスマホを取りし、ブレしないよう息を殺して領収を撮しました。 付、名、商品名、額、受領印。 すべてを鮮に記録に収めると、領収を元通りにつ折りにし、夫の内ポケットの元の位置へそっと戻しました。
斎へ向かい、鍵のかかる机の引きしから帳を取りします。 、夫の帰宅、酔の様子、の特徴、そして座の領収の記録。 私は震えることのないで、事実だけを淡々と帳にき留めました。
しかし、この百万円のネックレスは、夫が仕掛けていた底れぬ巨なの、ほんの入りに過ぎなかったのです。